パック入りわらび餅でまさかの「楊枝レス」!?衝撃広がる→実は、お客を思うメーカーの苦渋の決断だった

山脇 未菜美 山脇 未菜美

水色トレーに入ったパック入りわらび餅の楊枝が、一部地域でなくなったと話題になっている。全国のスーパーで、100円前後で売られている人気商品。ネットでは「なくしていいものと悪いものがある」「どうやって食べればいいの」と困惑の声が上がる中、企業にとっては究極の決断だったという。「物価高や円安であらゆる物の値段が上がる中、量も味も値段も変えずお客様の満足感を保つため、もうこれしか削るところがない状況でした」

大阪府八尾市にある明日香食品。1992年に先駆けて販売を始め、年間1億5千万粒のわらび餅を生産する。涼やかな見た目ともちっとした食感が特徴で、付属のきな粉や黒蜜をかけて食べる。大阪のスーパーマーケットなどで80円台で売られており、「毎日、おいしく食べられるお得な値段」が売りだ。原価増に加えて、エコ対応を求める政府などの要請もあり、プラスチック楊枝は今年2月から、東日本で竹楊枝に変更。西日本では廃止し、200人に楊枝のプレゼントキャンペーンを始めた。

 味と満足感に妥協したくなかった

わらび餅の原材料はわらび粉、タピオカ、砂糖。きな粉は、大豆と砂糖。輸入に頼る部分も多く、砂糖の価格は2年前の2倍、大豆は7~8割増し。もっちり食感を出すため、製造時に冷水を使っているが、水温を下げるために必要な電気代はこの1年で一気に跳ね上がった。トレーやラップの元になる原油価格、物流に不可欠な段ボール、運送賃も上昇するなど、企業にとっては死活問題となっている。

「弊社はスローガンとして『ちょっと食べる喜びを毎日世界へ』を掲げています。お得感のある価格を維持するために、社内で本当にたくさんの議論をしました。容量を減らすのか、値段の高いわらび粉の使用をやめるのか、タピオカ粉の品質を落とすのか、水を冷やさず作るのか、きな粉の量・質を下げるのか。でも、ぷるぷるの食感、透明な見た目、香ばしい香り…全てを妥協したくない。それがスタッフみんなの想いでした」。此下竜矢社長は、決断の背景を語る。

箸で食べるおすすめの食べ方

究極の選択として、コストカットに選んだのが楊枝だった。明日香食品は工場が東西に分かれており、東日本では、割安でエコな竹楊枝に変更。価格をさらに絞らなければならない西日本では、楊枝をなくした。一方、西日本では新しい試みとして、4月30日まで、西陣織の袋に入ったリッチな楊枝5本セットを200人にプレゼントする企画を始めた。「茶の文化が発展する京都もあって、関西の人たちにも面白いと思ってもらえるかな…と期待を込めてです。東西別々の取り組みで、お得感と満足度の両立を追求したいと思っています」と話す。

では、楊枝がなくなった西日本ではどうやって食べればいいの…? 恐る恐る尋ねると、箸を使ったおすすめの食べ方を教えてくれた。「流水で洗ってからきな粉をかけてください。ぷるっと出来立てのような食感が戻ります。自宅の爪楊枝は弱く折れてしまうこともあるので、箸やスプーンで安全においしくいただいてもらえれば」

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