歌手・沢田研二が1月19~21日に東京・日本武道館で開催した3日連続公演の最終日をステージの真後ろから見た。たまたまだった。昨秋、8000円のチケットをコンビニエンスストアで購入した時は席番がどこに位置するかも認識しておらず、当日になって、360度の客席中、舞台の背後の席だと初めて知った。演者の背中から、つまり“ジュリー目線”で見渡した会場には「関係者が4割」などの一部報道によるイメージとは真逆の光景が広がっていた。
昨年10月、さいたまスーパーアリーナ公演を直前で中止。当事者のファンよりも、“外の世界”で問題視された。「空席が目立った」とされた理由から、1月の武道館公演直前には「無料招待メールが送られた」といった証言まで報じられた。
だが、ふたを開けると約9000席はほぼ満席。ステージ真後ろの席に座ったことで、アリーナ席から1~2階席の観衆と対峙する形になったのをこれ幸いと、サッカー取材で使う双眼鏡で客席を見渡した。最上段まで9割近くの人がノリノリで手拍子を続けている。義理で座りに来た人が“4割”もいるとは思えなかった。仮に無料入場者が多かったとしても、その大半がファンだと実感できた。
ギタリスト・柴山和彦との2人だけのステージには余白が広がっていた。道化師の衣装に身を包んだ古希の歌手は、その空間に他界した先輩やGS時代の仲間の姿を見ていた。