授乳婦への内服投与 ダメなものはほぼなし

ドクター備忘録

松本 浩彦 松本 浩彦
待合室で順番を待つ母親は不安なものです
待合室で順番を待つ母親は不安なものです

 先日、授乳中のお母さんに抗生物質を処方したら、たいそうご心配されました。その薬は半減期が長く1日1回の服用で良いので、われわれ医者にとって処方しやすい薬です。実際よく効きますし。半減期が長いのは、母乳育児中には良くないのではないか、という考え方には一理ありますが、この薬の場合、体重5キロの赤ちゃんで1日あたり母乳から2・0mg移行し、臨床的には全く問題にならない微量です。

 そもそもお母さんが抗生物質を内服しなければならない状況であれば、赤ちゃんも内服が必要となる可能性があります。お母さんの感染症が赤ちゃんにうつらないとは言い切れません。ですので、乳児に支障をきたさない=授乳中のお母さんが飲んでも全く問題ない、と言えます。ほとんどの薬の添付文書には、妊娠中、授乳中は服用に注意を促す文言が書かれていますが、添付文書を棒読みする方がむしろ恥ずかしいと言えます。

 で、本題。いま母乳でお子さんを育てているお母さんたちに覚えておいて欲しいことがあります。薬の添付文書は動物実験による注意事項を記載しているだけで、人体への影響を正確に予測するものではありません。日本では厚労省事業の一環として「国立成育医療研究センター」で科学的な情報をもとに評価を行い、授乳期でも安全に使用できる医薬品をリストアップしています。

 結論を言えば「いま病院で処方される薬はほぼ全て、授乳中でも安全に服用できる」です。授乳婦だからこれはダメ、というのは実際のところありません。同センターでダメと言ってるのは、放射性ヨウ素、麻薬、覚醒剤、ごく一部の抗不整脈薬だけ。一般の疾病に対して処方されることはまずない薬ばかりです。

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