液体ミルクは衛生管理に気をつけて! 「赤ちゃんを守る」災害時の母子支援 石川県公式アカが紹介 

大田 亜由美 大田 亜由美

能登半島地震などの地震に限らず、災害が起きると「災害弱者」といわれる方々の避難がいつも課題になります。例えば、小さい子どもと一緒に避難されている方々の苦労はさまざまで、赤ちゃん連れの避難生活は大変なものがあるでしょう。避難所に配られる食料はまだ赤ちゃんは食べられず、ミルクや母乳を頼りにするしかないのです。

今回の能登半島地震では、液体ミルクやベビーフードが各メーカーや自治体から支援物資として配布されていると報道されています。そのような中、石川県の公式アカウント「石川県『もっといしかわ』」(@motto_ishikawa)では、「液体ミルクを使用する際の注意」が掲載されました。液体ミルクを赤ちゃんにあげるときには、どのようなことに気を付けたらいいのでしょうか。また、被災している親子を守るためにできることは何があるでしょうか。

液体ミルクを赤ちゃんにあげるときは「清潔・衛生」を心がけて

液体ミルクとは、調乳済みのミルクで、お湯や水に溶かさずにそのまま赤ちゃんにあげることができるミルクです。日本では2018年に液体ミルクの製造・販売が解禁されました。常温での保存が可能なうえ、清潔なお湯がなくてもあげられるため、今回のような災害でも支援物資として複数のメーカーや自治体が被災地に液体ミルクを提供しています。

石川県の投稿によると、液体ミルクをあげるときの注意点として、

・液体ミルクの容器はよく振り、清潔な容器に移してご使用下さい。
・哺乳瓶の準備ができない場合は、紙コップや衛生的なコップなどで代用して下さい。
・飲み残しは必ず破棄しましょう。開封後の保存や再加熱は行わないでください

などを呼びかけ、「母と子の育児支援ネットワーク」のサイトを掲載しています。「母と子の育児支援ネットワーク」とは、乳幼児期の栄養についての適切な情報を母親・社会に広げることを目的とした団体です。サイトには、災害時の乳幼児に対する栄養についてなど、さまざまな支援情報が掲載されています。

「お母さんを支援することで赤ちゃんを守る」ミルクの赤ちゃんも母乳の赤ちゃんも応援したい

「母と子の育児支援ネットワーク」代表の本郷寛子さんは、「投稿が素晴らしいという感想もいただきましたが、Xで紹介されたコップ授乳は新生児には難しいのでは、といった声もありました」と教えてくれました。団体では「コップで授乳 哺乳瓶でなくても飲めるの?その方法を知りたいお母さん・ご家族へ」というパンフレットを制作しています。紙コップでミルクを飲ませようとしている保護者の方は、是非参考にして下さい。

※参考:母と子の育児支援ネットワーク「コップで授乳 哺乳瓶でなくても飲めるの?その方法を知りたいお母さん・ご家族へ」
https://i-hahatoko.net/wp-content/uploads/2020/04/cupfeeding.pdf

また、本郷さんは「母乳育児をされているお母さんも『災害前の子育て』を続けられるような総合的な支援が必要」と言われています。石川県の公式アカウントでも、液体ミルクの注意点に続いて、「被災前の授乳が続けられるように…」との投稿をしており、あわせて注目してほしいと本郷さんは語っています。その投稿とは、

・赤ちゃんを守る免疫を含む母乳は少しでも多く飲ませるとそれだけ作られ続けます。
・被災前の授乳が続けられるよう、ミルクの必要性や量については医療者とご相談ください。

という、母乳での授乳を続けることの大切さを訴えたものです。

「ストレスで母乳が止まる」と言われることもありますが、そう言い切るのは誤解だそう。「母乳が一時的に出にくくなると感じることはあっても、作られなくなるわけではない」とのことです。母乳育児をしている方に液体ミルクを配るよりも、母乳をあげているお母さんが授乳に専念できる環境を整えてあげることが大切で、本郷さんは「ミルクの赤ちゃんも母乳の赤ちゃんも、被災前と同じような授乳を続けるための支援が大切」と訴えています。

実際に「内閣府男女共同参画局の女性の視点から見た防災・復興ガイドライン」にも、ミルクの赤ちゃんには「必要な乳児に衛生的な環境で提供することができるよう、必要な機材や情報をセットで提供する必要があります」と書かれています。また、母乳の赤ちゃんにも、「母親がリラックスして母乳が継続して与えられる環境を整え、必要な水分・ 食料や休息を取るための支援が必要」とあり、被災前と同じように授乳が続けられるように支援することが大切だと説明されています。

「疲れた」と言えない保護者の方もぜひ「声をあげてほしい」「相談してほしい」

 本郷さんは、「疲れたとは言えずに保護者の方は頑張っている」と被災地の状況に思いをはせながらも、「被災地だけではなく、広域避難をされているかたも含めて、困った時には、ぜひ声をあげて助けを求めてほしい」と呼びかけています。「親なんだからしっかり子どもを守らなくては…」など、保護者の方は弱みを見せづらいかもしれませんが、悩みを抱え込まずに、以下のような相談窓口を利用してください。

 「母と子の育児支援ネットワーク」では、能登半島地震における乳児栄養支援のための情報をホームページにまとめており、災害時の緊急相談窓口(無料)も設置しています。また、「コップで授乳」する方法のパンフレットも用意しているので、液体ミルクを赤ちゃんにあげる時の参考にしてください。ミルクの赤ちゃんにも母乳の赤ちゃんにも、必要な支援が届き、親子ともに安心して生活できるような環境を整えていきたいですね。

【出典】
▽石川県公式アカウント「石川県 もっといしかわ」(@motto_ishikawa)
https://twitter.com/motto_ishikawa/status/1746429370284273823
https://twitter.com/motto_ishikawa/status/1746429880517218784
▽母と子の育児支援ネットワーク
https://i-hahatoko.net/

【参考】
▽男女共同参画局「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」
https://www.gender.go.jp/policy/saigai/fukkou/guideline.html
▽授乳アセスメントシート①(聞き取り票)
https://www.gender.go.jp/policy/saigai/fukkou/pdf/guidelene_10.pdf
▽母と子の育児支援ネットワーク「液体ミルクを使用するお母さま、ご家族の方に 災害時に安心して使うためのチェックリスト」
https://i-hahatoko.net/wp-content/uploads/2021/03/how-to-use-liquid-formula-safely.pdf
▽母と子の育児支援ネットワーク「災害時の赤ちゃんの栄養」
https://i-hahatoko.net/?p=745

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