11月17日は世界早産児デー 早産の赤ちゃんに必要なドナーミルク→「見ず知らずの女性の母乳って安全?」実際は?

宮前 晶子 宮前 晶子

11月17日は世界早産児デー。1500gに満たない体重で生まれてきた赤ちゃん(早産・極低出生体重児)とその家族が抱える課題への意識を高めるため、世界的に2011年に制定。現在、世界的には10人に1人が、日本では20人に1人が早産で生まれているにも関わらず、一般的には認識や理解度が低いという問題を抱えています。

妊娠37週未満で生まれた早産の赤ちゃんの中でも1500g未満で生まれた極低出生体重児に必要となるもののひとつが、ドナーミルク(寄付された母乳)。しかし、認知度が低く、日本でドナーミルクを必要とする赤ちゃんは全国で約5000人いると想定されていますが、提供できたのはわずか290人(2022年度10月までの調査による。ただし、利用病院からの未回答もあり)です。

ドナーミルクは、小さく早く生まれた赤ちゃんにとって、「感染症や腸の病気から守ってくれる薬のようなもの」です。早産で生まれた赤ちゃんのほか、お母さんの体調が悪い・産後まもなくで母乳の出が悪い・薬の服用時、最近は出産時にお母さんがコロナに感染した場合などにも勧められています。

しかし、出産直後に医師から提案されても、「初めて聞いたけど…」「見ず知らずの女性の母乳って安全なの?」と不安を感じる両親や「自分の母乳を与えられないのが辛い」と落ち込むお母さんもいることから、なかなか受け入れられないというのが現状なのです。

ジブンゴトにしない人がほとんど

母乳がたくさん出るお母さんが寄付した善意の母乳(ドナーミルク)を厳しいルールに基づいて管理し、母乳が必要な赤ちゃんに届ける施設で、赤ちゃんのいのちを救いたい、健やかに育って欲しいとの思いから2017年に設立されたのが「一般社団法人 母乳バンク協会」です。

「2019年時は、ドナーミルクを必要とする新生児に対して提供できたのはわずか1%でした。少しずつ知られることでドナーが増え、ドナーミルクを安定的に供給できるようになり、ドナーミルクに救われた赤ちゃんは増えてきていますが、まだまだ認知度が低いです」と、母乳バンクをサポートするピジョン株式会社の担当者は語ります。

妊娠中に母乳バンクという言葉を知ったものの、自分には関係ないことだと考える人、通院時に、クリニックで母乳バンクのポスターを見ても素通りする人、看護師さんから説明を受けても気に留めない人がほとんどだそうです。

「赤ちゃんとママを支える」パパの役割は大きい

妊娠出産においては、母親が中心となって、さまざまな情報を収集することが多々ありますが、出産直後のお母さんは心身ともにダメージが大きく、話を聞ける状況にない場合や重篤な状態にあることも。そんなときに、父親の出番です。

ドナーミルク利用の経験を持つお母さんたちは、「パパが積極的に情報収集してくれるといい」「産前産後は、私自身の体調が悪く、記憶がありません。夫が調べて、私に説明してくれたのが頼もしかった」「パパに、大丈夫と言ってもらえるだけで安心しました」と同社のヒアリング調査で回答。

決断を求められたお父さんたちも「先生と話をして、母乳をあげることが赤ちゃんにとって大切なこととわかりました」「世界でもさまざまな国で利用されていると聞いて安心したので、意識のないママに代わって決断しました」。お父さんの存在が重要であることが経験者の声でわかります。

「母乳をあげられないということは、どんな人にもありうることです。小さく早く生まれた赤ちゃんや母親の母乳を飲めない赤ちゃんにとって、母乳バンクの利用はベストな選択だということを、妊娠中から知って欲しい」と母乳バンクに携わる関係者は口を揃えて訴えています。

そのため情報が少しでも伝わるように、ピジョン株式会社では、母乳バンクの存在を広めるために商品パッケージへの記載、SNSで情報を紹介。母乳バンクの仕組みや赤ちゃんにとって母乳が必要な理由、ドナーミルクを使用した家族の声、赤ちゃんのいのちを救うために奮闘する医師たちの声を紹介するサポートBOOKも今夏から制作(クリニックで配布、日本母乳バンク協会などのサイトからダウンロード可)しています。

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「世界早産児デー」ではのシンボルカラーはパープル(紫)にちなみ、日本では「神奈川県庁本庁舎」(11月17日~20日)、栃木県の「獨協医科大学病院」(11月14日~20日)、「栃木県庁昭和館」(11月17日)、「岐阜市役所」(11月17日~23日)、山口県の「はい!からっと横丁」大観覧車」(11月16日~18日)、「下関市消防局・中央消防署合同庁舎」(17日)などでパープル色のライトアップがおこなわれます。普段はなかなか考えることのない早産や早産児について認識するきっかけとなりますように。

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