医師は患者に「希望」を与えるもの…余命宣告に思う

ドクター備忘録

谷光 利昭 谷光 利昭
 患者に「希望」を与える医師が増えてほしいです
 患者に「希望」を与える医師が増えてほしいです

 医師は、時として辛く、厳しいことを言い渡さなければいけないときがあります。いわゆる、余命宣告です。

 私は前々からこれに対しては疑問に思うことがあり、今まで余命を聞かれても、患者さん本人には明確に答えたことがないように思います。大病を患ったとき、残された家族のために何かをしなければならない、残り時間を知る必要があるケースも確かにあります。しかし、われわれ医師は本当に責任を持って余命を宣告することができるのでしょうか?

 本当は医師だからといって真の余命が分かるはずはありません。人は「希望」という命の源がないと生きていけない生き物であり、患者に希望を与える医師が簡単に余命宣告をしてはいけないと、私は思っています。余命ゼロ日と言われた患者さんが医師の治療から外れて14年生きたという例もあるそうです。

 逆に、どうして亡くなられたか分からない、がんの患者さんもおられます。その人は兵庫県在住の私の身近な患者さんで、膵がんでした。進行していましたが、私が尊敬する関東の先生に執刀して頂き、術後経過も順調で再発も認めませんでした。

 ただ偏食傾向があり栄養補給目的で、ある病院に入院依頼をされたのです。しかし、そこの外来の医師は、あなたは今生きているのが不思議なくらい、いつ死んでもおかしくない状態などと言い、点滴などもせずに外来を帰したと、患者さんから聞きました。ショックだったそうです。

 それから間もなく、その患者さんはお亡くなりになられました。未だに原因は不明です。私には、生きる「希望」をその医師の言葉により減退させられたことは無関係ではないと思えるのです。言葉ひとつが患者さんの生命に関わることをよくよく理解して、従事しなければならないと改めて心に刻みました。

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