大分・明礬温泉「御宿ゑびす屋」の来夢

九州温泉ねこめぐり

西松 宏 西松 宏

 JR別府駅からバスで約25分。大分県別府市の明礬(みょうばん)温泉にある老舗旅館「御宿 ゑびす屋」は、2016年4月の熊本・大分地震で被災し、今年1月11日に全館リニュアルオープンしたばかり。1人で宿を切り盛りする女将の本田麻也さん(53)に、サバトラ柄の来夢(らいむ、メス、6歳)が寄り添う。

 大分県別府市にある明礬(みょうばん)温泉は、江戸時代から続く、天然由来の入浴剤・湯の花の製造で有名だ。温泉街には竹組みの屋根をワラやカヤで覆った湯の花小屋が点在。温泉の噴気と青粘土を利用し、小屋内で湯の花の結晶を作り出す伝統製法は、国の重要無形民俗文化財に指定されている。

 「御宿 ゑびす屋」(旧ゑびす屋旅館)は本田さんの生家。明治7(1874)年、曽祖父の本田光五郎さんが創業した。「ひいおじいちゃんの夢にえびす様が現れ、『ここに人々が安らげる場所をつくりなさい』とお告げがあり、朝になると家の柱ににっこり微笑むえびす様が現れたそうなんです」(本田さん)

 その後、祖母の本田トリさん(享年83歳)が2代目、母親が3代目女将を務め、母が亡くなってから、本田さんは4代目として宿を継いだ。明礬温泉の源泉は硫黄泉と単純泉。同じ敷地内にある「湯屋えびす」には、露天風呂、内湯、ジャグジー風呂、岩盤浴などがある。硫黄泉は白濁色の湯が特徴で、高血圧、疲労回復、切り傷の治癒などに効くという。

 来夢は6年前、同宿で当時働いていた板場の男性が、通勤途中、山でカラスに顔を突かれ襲われていたところを助けだし、ダンボールに入れて同宿に連れてきた。

 「まだ生後2、3カ月くらい。顔は血だらけでぐたっとしていたので、助からないかもと思ったのですが、すぐ動物病院へ連れていき、注射を打ってもらうと元気を取り戻しました。当初は板場さんが里親を見つけると言っていたのですが、しばらく一緒にいるうちに情が移ってしまって」(同)。以来、来夢は同宿にある本田さんの自宅で飼われることになった。

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