若年性認知症の認知度は今回のドラマで随分と高くなったと思われますが、まだ一般的には低いはずです。そのために必要な情報やサービスを受け取れずに、社会から孤立無援になってしまうこともありえました。現在は、国、都道府県の事業として、若年性認知症に対する様々な支援が提供されていますが、それでも、まだ十分と言える状況ではないようです。
認知症の薬は開発が進んでいて、症状の進行抑制が可能となっていますが、薬の効果には個人差が大きく、全体的に言えば治療効果は芳しくないと言わざるを得ません。また、病が進行すれば食事摂取が困難になったり、尿、便失禁などを認めることもあり、テレビなどで描かれる“美談”で収まることは現実的には厳しいと思われます。社会的、医学的にも、まだまだ課題の多い疾患の一つなんです。
高齢化社会はさらに進んでいきます。認知症は誰でも、いろいろな形でかかわりうる疾患なのです。実際、介護要因の1位は、これまで脳血管障害(脳卒中など)でしたが、最近は認知症になりました。対岸の火事ではないことを認識し、個人的にも対策を講じていかなければならないでしょう。今回のドラマは我々に、問題を提示してくれた貴重なドラマであると思います。