脳卒中の後遺症として発症する可能性のある認知症。発症する理由や、一般的なアルツハイマー型認知症との症状の違いについて、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――脳卒中の後遺症として認知症になることもあるんでしょうか?
はい、ありえます。脳卒中で傷ついた場所が、高次脳機能障害を起こすような記憶に関わる部位だった場合は、認知症に似た症状が残ります。つまり、脳梗塞が起こった場所によっては認知症になってしまう可能性があり、これを脳血管性認知症と呼びます。脳梗塞とは意識せず、少しずつ無症候性の小さな脳梗塞が増えている人のなかには、少しずつ認知症になっていくという人もいるんです。この小さな脳梗塞はレントゲン写真を撮らなければ見つけられないため、知らず知らずのうちに脳血管性認知症になってしまうことがあるんです。
――脳血管性認知症には、男女差はあるのでしょうか?
生活習慣病が影響することから脳卒中そのものが男性に多く、同様に脳血管性認知症も男性は女性の2倍の発症数と言われています。
――症状に通常の認知症との違いはあるのですか?
通常、アルツハイマー型認知症は記憶障害から始まり、症状はゆっくりと進行していきます。脳血管性認知症にもゆっくり進行するものもありますが、脳梗塞を繰り返すことで段階的に病状が大きく進行することもあります。
――脳血管性認知症は治療できるのでしょうか?
発症してしまった場合、完全に治癒することは難しいとされています。そのため、発症してしまわないように予防することが非常に大切です。血圧の管理を厳密に行うことで、知らないうちに脳血管性認知症になっていた場合の進行を遅らせることができます。高血圧が続くと小さな血管が詰まりやすくなり、血管の詰まりが増えるほど認知症は進行してしまうんです。つまり、認知症の進行を遅らせるためにも、高血圧を防ぐことはとても重要なんです。
――脳血管性認知症の患者数は多いのですか?
はい、多くの患者さんがいらっしゃいます。患者数はアルツハイマー型認知症の次に多いとされており、その両方を発症している方も多いんです。
◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、脳神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科