何でも知ってる隣のおばちゃん…けれど、医師を信頼していただきたい

町医者の医療・健康コラム

谷光 利昭 谷光 利昭
 「たにみつ内科」で保管されている患者さんのデータ。これはほんの一部だそうです
 「たにみつ内科」で保管されている患者さんのデータ。これはほんの一部だそうです

 今の医療はEBMといって「理論的根拠に基づいた医療」を薦められていますが、EBMは操作することが可能なのです。そこには、医療の落とし穴があるような気がします。われわれは統計学的有意差を用いて、理論を推し進めていくことが多いです。そんな中であってはならないことですが、データは意図的に作ることも可能なのです。ですから、EBMを鵜呑みすることは危険を伴うこともあるのです。もちろん、ほとんどのEBMが最大の善意、最新のデータ、最新の知識を用いて作製されていることは紛れもない事実です。ただ、例外もあるということです。

 時々、おばちゃんでも、われわれ医師が“驚くような情報”を伝えてくれることがあります。医師は基礎知識があるので、ある程度正しく取捨選択することができます。しかし、医学的知識を持ち合わせていない一般の人たちに正しい取捨選択は難しいのです。

 こんな患者さんがおられます。「先生、この薬とこの薬を頂戴!」。ここは、薬局ではないし、劇薬をそんな簡単に渡せません。その理由を分かりやすくお話したつもりですが、時折、激昂される方もおられます。もっとひどくなると、勝手に間違った診断をつけて来院されて、私はこの病気だからこの薬を頂戴とおっしゃる人もおられます。また、私に相談しに来ているふりをするのですが、最終的には自分の考えと違うことを説明すると激昂される患者さんもおられます。

 医師は最大の善意をもって医療行為に臨まなければなりません。それは、患者さんに信じていただくしかありません。確かに医師によって違った考えがありますので、あそこの病院ではこう言われたけど、ここは違うこと言うなぁ…って事は少なくないでしょう。ただ、両方とも正しいことも多々あるのです。

 非常に難しいのですが、最終的には信頼関係のもとに医療行為を行うしかありませんし、私は信じて頂けるように更に精進していく所存です。やや取り留めのない話ですが、最近、診察室で感じたことをお話ししました。

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