世は空前の“高級食パン”ブームだとか。今年に入ってからも全国的に食パン専門店の出店ラッシュが続く。そんななかで関西セレブの街、芦屋に“限りなく無添加に近い”極上の店がオープンした。「明日の食パン」がそれだ。オーナーの田中寿幸さん(41)は、創作鉄板料理で人気の「鉄板神社」を展開する関西飲食業界の風雲児。超ハイソな激戦区に出店した思いを聞いた。
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JR芦屋駅から徒歩3分ほど。国道2号線を左に折れると通り沿いにおしゃれな暖簾が目に入った。全面がガラス張り。外から店内をのぞける仕掛けになっている。
中に入ると独特のいい香りが鼻を突く。内装がまたしゃれていた。ゆったりとした広い空間。壁は木枠となっており、食パンやジャムなどが並べられていた。奥も広々としたパン工房となっており、2台の大型オーブンが備えられていた。
「工房と店舗が一体化した広めの物件を探していたところ、40坪とドンピシャのところが見つかったんです。どうせやるなら芦屋でやってみようと。神戸、芦屋は食パンの激戦区。この周辺だけでも5店舗あります」
こう話すオーナーの田中さんは大阪のキタとミナミに創作鉄板料理「鉄板神社」を6店舗展開し、焼きそば、焼き鳥、ケーキ店なども経営。特に鉄板神社は「220席で月商1億円と席数売り上げ日本一」として知られ、その“極意”は著書「乗り越えられない壁はない」にもなっている。
「この数字を残そうと思ったらすべてがそろっていないとダメ。味、場所、接客サービスなど。打者で言えばイチローのようじゃないとできません」
そんな田中オーナーがあえて芦屋に、なぜ激戦部門の高級食パン店を出すことになったのか。そこには、たくましい商魂と人間くささがあった。
「本当の食パン店を本物志向の場所でやりたかったから。食パンは日常生活に欠かせませんし、それと食パンは1日の始まり、大げさに言えば人生の始まり。いろんな人の1日の始まりに携われていることでやりがいを感じてます。店名の“明日の”には希望や未来の意味を託しているんですよ」