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大好きなシーバが食べられない——食道狭窄でほとんど食事ができない15歳トラ猫 回復食で命をつなぐ日々、飼い主の願いは「もう一度バリバリ食べてほしい」

ふじかわ 陽子 ふじかわ 陽子

大阪府で暮らすO家の猫、はやてくんは高級キャットフードの「シーバ」が大好きです。外側はカリッと中身はとろーりとして、とても美味しいのだそう。バリバリと豪快に頬張る姿は、お母さんにいつも笑みをもたらしてくれていました。

でも、今、はやてくんはシーバを食べることができません。それは、食道狭窄になってしまったからです。シーバだけでなく、ほとんどの食べ物を口にすることができません。

食べられるのはa/d缶ぐらい

はやてくんを襲った食道狭窄という病は、文字通り食べ物が通る食道が何らかの理由で狭まってしまうものです。軽症の場合は食道にバルーンを通して、空気を入れていき広げていく方法で良くなるのだそう。

しかし、はやてくんは今年15歳と高齢で、体力がありません。それ以前に食べられないことにより免疫力が下がっているため、手術に耐えられない可能性が懸念されると動物病院で診断されています。

それでも食べなくては生きていけませんから、高カロリーの回復食「a/d缶」やチューブダイエット等の特別療法食を毎日食べます。とても高額な缶詰ですが、はやてくんはこれ以外ほとんど口にすることができません。食べたいという気持ちがあっても、胃まで到達する前に吐き戻してしまいます。

そんなはやてくんの姿に、お母さんは胸が痛みます。出会ったころ、まさかこんな未来が訪れるだなんて、思ってもみませんでした。

どうすればこの子が幸せになれるのか

はやてくんが誕生したのは、2010年12月の徳島県。生後1カ月ごろ猫風邪をひき弱っているところ、現在も活動を続ける動物愛護団体「ハート徳島」に保護してもらったのだそう。2011年2月ごろから里親募集をブログで開始し、お母さんはその投稿を目にしたのでした。

この時、掲載されていたのは、お世辞にも「かわいい」とはいえない写真。猫風邪で右眼球を摘出され片目ですし、なんだか全体的にぐにゃぐにゃしています。けれど、お母さんは誰よりも、この猫が気になりました。

「幸せになってほしい」

そう願うものの、どうすればこの子が幸せになれるのか最初分かりませんでした。O家に迎え入れることも検討しましたが、直前に黒猫を迎えたばかり。他にも猫が1匹いて、3匹になったら世話も今以上になると考えました。

お母さんはパソコンの前で、1カ月以上も悩みました。同じ写真を何度も見ては涙を流し、思い悩む。

「誰のために猫を飼いますか?」

2011年2月下旬、お母さんは思い切ってハート徳島に連絡を入れることにしました。「あの子を迎えたい」と。猫が3匹になっても、障害があったとしても、幸せにしてあげたい。

ハート徳島からの返信は、少し時間が経ってからありました。お母さんは飛び上がるほど大喜び。徳島県と大阪府、離れているので無理かなと思ったのです。喜んだのもつかの間、ハート徳島はとても忙しいらしくメールは途切れがちに。

そうこうしているうちに東日本大震災が起き、日本中の動物愛護団体が被災地に取り残された動物のためにてんやわんや。急を要さない里親募集は、後回しにされるかと思われました。

お母さんも「仕方ないか…」と半ばあきらめていたころ、譲渡のためのアンケートがFAXで届きます。そこにあった設問にお母さんはドキッとしました。「この子を迎えるのは、誰のためですか?」。お母さんは迷わず記入しました。

「この子の幸せのため」

初めてのプレゼント

お母さんはドキドキしながら、ハート徳島からの返事を待ちました。ハート徳島からの返事は、「ぜひ里親になってください」。震災が少し落ち着いた4月29日、大阪まで連れてきてもらうことに。

初めて会うあの子に、お母さんは大感激です。ハート徳島のスタッフもこの人なら安心と、少し確認をしただけでO家をあとにしました。その後は被災地に救援物資を持っていくとのこと。

ハート徳島を見送ったお母さんは、あの子に最初のプレゼントを渡しました。それは名前です。「疾風」と書いて「はやて」。東日本大震災の被災地も走る特急列車の名前です。つらいことがあっても、また線路の上を駆け抜けられるようにという願いから。

力強い名前をもらったはやてくんは、片目なんてなんのその。たくさんご飯を食べて、たくさん遊んでO家の人気者になるまで時間はかかりませんでした。

シーバが食べられない

はやてくんはとても世話焼きな猫で、保護猫活動を始めたお母さんのサポート役を買って出てくれました。子猫のお世話はもちろんのこと、犬であっても色々「我が家のしきたり」を教えてあげるんです。

中でも同じ歳で慢性腎不全の銀くんは、特に仲良し。銀くんもはやてくんと一緒にいると、とても元気になるんですよ。

多くの猫や犬に元気を与えていたはやてくんが、突然高熱にうかされるようになったのは2019年4月のこと。毎日動物病院へ通うのですが、原因が分かりません。1カ月ほど経ち改善してきたころに、突然ご飯が食べられなくなってしまったのです。大好きなシーバでさえも。検査の結果、食道が狭くなる「食道狭窄」と診断されました。

食べても食べても逆流してしまい、動物病院でCTや内視鏡検査もしたのですが、原因は分からずじまい。流動食は食べられるので、積極的な治療はせず様子を見ることにしました。

体調を崩していた時期にFIPも発症

思い切りご飯が食べられなくなったはやてくんは、当初頑張って飲み込もうとしていました。ご飯を咀嚼している時は笑顔なのですが、どうしても吐き戻してしまう。はやてくんは次第に食べることをあきらめていきました。

そうした体調を崩していた時期に、2021年にはFIP(猫伝染性腹膜炎)を発症しました。お母さんは薬を毎日同じ時間に飲ませました。固形物は飲めませんから、毎回錠剤を粉にしていたんです。はやてくんは嫌がることなく、毎日薬を飲みました。

というのも、薬を飲む時はa/d缶を出してもらえたからなんです。とても美味しいらしく、カリカリをふやかしたものより断然イイ!吐くのはもったいないので、必ず頑張ってゴックン。お母さんはこの食い意地にとても助けられました。

治療を続けた結果、症状は次第に落ち着き、現在も元気にO家のお世話係として活躍しています。

お母さんの夢

せっせと仲間の猫の世話を焼くはやてくんを見て、お母さんはこう思うのだそう。

「うちに来て幸せだった?」

食道狭窄になる前なら、お母さんは自信を持って「はやてくんを幸せにした」と言えていたんです。だって、シーバを頬張るはやてくんの表情は幸せそのものでしたから。世界中の幸福を集めたかのよう。

だからお母さんは今、またはやてくんにシーバを食べさせてあげたいと考えています。それが一番の夢です。しかし、最低でも2~3回の手術は体力がもちません。手術以外の方法はないか、インターネットを中心に情報を集めています。

この夢は叶うでしょうか。

はやてくんは半ばあきらめています。シーバがあっても、仲間にどうぞとするぐらい。しかし、お母さんはあきらめていません。はやてくんを幸せにするために、わざわざ徳島から大阪まで来てもらったのですから。

どうか奇跡が起き、またシーバをバリバリいわせて食べられる日が訪れますように。

   ◇   ◇

【保護主:悠里さん】
▽ブログ
https://ameblo.jp/prinprin0000
▽Instagram
https://www.instagram.com/yuri_mika1991/

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