「友達『結婚しました!!!』 友達『子供産まれました!!!』 友達『昇進しました!!!』
俺『見て、石炭!』」
こんなポストをされたのは内山ケイ(@Chishitsu)さん。
友人たちの人生の節目となる報告が続く中、北海道の沢を遡って見つけた美しい石炭塊を「見て、石炭!」と報告したユーモアあふれる投稿です。
どっしりとした石炭塊の形状が、思わずクスッと笑ってしまうタイミングで登場する一枚となっています。
「石炭で返すセンスすごい」
「マインクラフトかと思った」
「これはこれで羨ましい発見」
「専門家の喜びが伝わる」
投稿には、さまざまな声が寄せられました。石炭発見の裏側を内山ケイさんに伺いました。
――大学院で地質学系の研究をされているのでしょうか?
「大学院(博士課程)では古生物学と地質学の研究を行なっており、主に小型甲殻類の『介形虫(貝形虫、オストラコーダ)』を扱っております。
介形虫は約5億年前から地球上に存在している基盤的な甲殻類であり、古生物の進化や移動、適応の研究に適した生物ともいえます。
私の場合は、新第三紀以降(約2300万年前〜)の介形虫化石をテーマに研究を行っています」
――「見て、石炭!」との投稿ですが、どちらで発見を?
「趣味&調査で訪れた地域に該当するのであまり細かいことは言えませんが、北海道の沢の奥とだけしか…すみません」
――この石炭を見つけた瞬間、率直にどのように感じられましたか?
「沢の下流にも石炭塊が散らばっていたので、遡上すればきっと古第三系の石炭層露頭があると踏んでいましたので、概ね予想通りかなと。
また、地質図通りちゃんと石炭層を含む古第三系の層が分布していることは事前に知っていたので、自分の目でその層を確認できて良かったです」
――友人の方々の報告に対して「石炭」で返すというユーモアはどのような気持ちで書かれたのでしょうか?
「たしか元々のミームの1つだったはずなので、それにのっかる形でした。
人にはそれぞれの喜びがあり、その1つがたまたま石炭露頭から良い感じのサイズで美しい石炭塊を掘り出して喜べたというだけかなと」
――この石炭には、地質学的にどのような価値や面白さがあるのでしょう?
「石炭自体にどんな価値があるかは難しいところがあります。むしろ、石炭層よりも石炭層を挟む堆積岩の方が大事かなと思いました。
石炭を作るための植物がどこで堆積したのか、またどんな植生が当時は繁茂し、どんな生物が闊歩していたのかが重要です。
また、少なくとも古第三系の石炭層が急に古第三系の深海成層のところに出て来ました。
露頭をみるに、少なくとも石炭層に背斜軸が存在しており、この沢での地質図を描くには大事かなと」
――今回の投稿に大きな反響がありました。
「個人的には石炭は小さい頃から馴染みのあるものでしたので、ここまで驚かれたりすることに驚きました。
印象に残るコメントはやはりゲームのマインクラフトに関するコメントです。
マインクラフトという名前は聞いたことあったのですが、これまでゲームに全く興味を示さずきたので内容までは…でした。
しかし、どうやら石炭が登場するとのことで、そちらに驚きました」
内山ケイさんは、「化石(古生物)や地質はこの地球が出来てきてから絶えず記録されてきたものであり、意外と身近に存在しています。今生きる生物や地球の成り立ちを解き明かす鍵が、実はものすごい身近にあるのかもしれません」と話してくれました。
事前の地質図から石炭層の存在を予測し、実際に沢を遡ってその読みを的中させる——研究者としての緻密な観察眼には凄まじいものがありますね。
マインクラフトを知らなかったという内山さんが、ゲームの世界と現実の石炭層で思いがけず繋がったというのも、なんとも興味深い巡り合わせでした。