去年結婚した32歳女性のAさんは、来年の初秋に第1子の出産を控えています。実家は九州にあり、両親と同居する妹夫婦は数年前に実家を二世帯住宅に建て替えました。Aさんは当初から、出産後しばらく実家に身を寄せるつもりで、両親も「部屋はいくらでもあるから」と快く受け入れていました。
ところが、同居する妹から思わぬ反対を受けます。理由は、妹夫婦の第二子が今年生まれたばかりで、赤ちゃんのスペースや生活リズムが安定しておらず、そこにAさんの出産・育児が重なるのは負担が大きいというものでした。
両親は「気にせず来ればいい」と言ってくれましたが、妹の態度は変わらず、Aさんは結局、実家近くのウィークリーマンションを借りることになりました。費用は両親が援助してくれたものの、Aさんの心には「実家に帰れなかった」という寂しさが残っています。
出産を控え、心身ともに不安定になりやすい時期に、両親や姉妹の関係をどう受け止めればよいのでしょうか。里帰り出産をめぐる家族との距離感について、心理カウンセラーの角田里穂さんに話を聞きました。
もう実家には頼れない?不安になる前に確認すること
―親が了承していても、妹夫婦が同居する実家に里帰り出産をする場合、同居家族の同意は必要なのでしょうか?
法律で決まっているわけではありませんが、実際に一緒に生活することになる同居家族の気持ちにも配慮することが大切です。
ただ同時に、初めての出産を控えたAさんが親元を頼りたいと思う気持ちも、我がままなことではありません。
実家の名義が親であっても、日々の暮らしを支えているのは同居家族です。一方で、里帰りする側にとっても、心細い時期に頼れる場所が実家であることは変わりません。
親御さんも交えて早めに話し合い、それぞれの不安や協力できる範囲を共有しながら、無理のない方法を一緒に考えていきましょう。
―里帰り出産を希望する場合、家族間のトラブルを防ぐために何を話し合っておけばよいでしょうか?
里帰りする期間や、滞在中にどんなふうに助け合っていきたいかを、できるだけ具体的に話しておくと安心です。「家事はどうするか」「赤ちゃんのお世話はどこまでお願いしたいか」といったことは、実際に暮らし始めてから気持ちのズレが生まれやすいポイントです。
同居家族に小さなお子さんがいる場合は、生活リズムや部屋の使い方を早めに聞いておけるとよいでしょう。妊娠中は気持ちが揺れやすい時期なので、「お願いしたいこと」と「無理には頼まないこと」を自分の中で整理しておくと、相手にも思いが伝わりやすくなります。
―「自分の実家なのに帰れない」と感じたとき、結婚後の実家との距離感をどう受け止めればよいでしょうか。
「実家」という場所は、結婚や家族構成の変化とともに少しずつ形を変えていくものです。子どもの頃と同じように感じていても、そこで暮らす家族にはそれぞれ新しい生活があります。
だからといって、自分の居場所がなくなったわけでも、家族とのつながりが薄れたわけでもありません。悲しさや寂しさを感じたときは、その気持ちを無理に我慢せず、ご両親へ素直に伝えてみることも大切です。気持ちを言葉にすることで、お互いの思い違いが解けたり、新しい距離感を築くきっかけになることもあります。
実家という「場所」と、家族との「つながり」を分けて考えてみることで、少し心が軽くなることもあるでしょう。
◆角田里穂 (かくた・りほ) カップル・夫婦・心理カウンセラー
TIALLY(ティアリー)所属。TIALLYは、夫婦・カップルに関する悩みに特化したオンラインカウンセリングサービスです。「Together, I am your ally.(共に歩む、心のパートナー)」をコンセプトに、関係修復やコミュニケーション、不倫、離婚、結婚前後の悩みなど、夫婦・パートナー間のさまざまなご相談に対応しています。また、夫婦・家族・パートナーシップに関する情報発信や記事監修にも取り組んでいます。
▽TIALLY公式サイト
https://www.tially.jp