40代女性のAさんは、要介護3(日常生活にて全面的な介護が必要な状態)となった実家に住む母の介護のため、仕事を辞めてパート勤務に切り替え、夫と子どもと共に実家近くへ転居します。それから8カ月経過し、慣れない介護と家事の両立に気を張り詰めていた冬のある夜、背中に強い痛みを感じ、皮膚科で帯状疱疹と診断されました。
治療で症状は治まったものの、その後から頬や首まわりの肌荒れが続くようになり、鏡を見るたびにくすみや目の下のシミが増えていることに気づきます。以前は月に1度は美容院に通い、身だしなみに気を配っていましたが、母の通院や食事、介助に追われて自分の時間はほとんど取れません。
ある夜、せめて皮膚科だけでも診てもらいたいと夫に相談すると、「その年でシミくらい今さら気にしなくても」と笑われてしまいました。
Aさんのように、介護ストレスから体調不良や肌荒れが続くことはあるのでしょうか。また皮膚科に頻繁に通えない環境でもできるセルフケアはあるのでしょうか。皮膚科医の蓮池林太郎さんに聞きました。
肌荒れが気になる、でも皮膚科に行く時間も余裕もない
ー介護ストレスから帯状疱疹になることはあるのでしょうか?
介護ストレスから帯状疱疹を発症することは十分あり得ます。帯状疱疹の原因となる水痘・帯状疱疹ウイルスは体内に潜伏し、加齢や疲労、強い精神的ストレスなどによって免疫力が低下すると再活性化します。介護による肉体的・精神的な負担が重なると免疫機能が弱まった場合、発症のリスクが高まります。
ー帯状疱疹が治った後に肌荒れが続くことはあるのでしょうか?
帯状疱疹が治った後、水ぶくれが出ていた部分の皮膚に赤茶色のシミのような色素沈着が残ることがあります。強い炎症が起きた部位ではメラニン色素をつくる細胞が刺激され、メラニンが過剰につくられます。肌のターンオーバーで排出しきれずに留まってしまうためです。
個人差はありますが、時間の経過とともに徐々に薄くなっていくケースが多いものの、紫外線を浴びると色が濃くなりやすいため、跡が残っている間は保湿と日焼け対策を続けることが大切です。
ー介護などの強いストレスが肌に与える影響を教えてください。
介護のように先の見えないストレスが続くと、体だけでなく肌にもじわじわ影響が出てきます。ストレスがかかると分泌される「コルチゾール」というホルモンが増えると、肌の水分を守ってくれる「セラミド」が作られにくくなり、バリア機能が弱ってしまうのです。
バリアが弱った肌は乾燥しやすく、ちょっとした刺激にも敏感です。頑張っている分だけ、肌にもその疲れが現れやすくなります。
ー皮膚科に通えない環境でも実践できる、肌荒れや色素沈着へのセルフケアを教えてください。
セルフケアでは、紫外線対策や摩擦を避ける、そして保湿が大切です。色素沈着は紫外線を浴びるとより濃くなりやすいため、季節を問わず日焼け止めを塗る習慣をつけましょう。
洗顔時にゴシゴシこすったり、肌を強く触ったりするのも刺激になるため避けてください。
市販のスキンケアでも、ビタミンC誘導体やナイアシンアミドが配合された化粧水・美容液は、色素沈着のケアに役立つとされています。
◆蓮池林太郎(はすいけ・りんたろう) 医療法人社団SEC理事長/新宿駅前クリニック院長
帝京大学医学部卒業。国立精神神経センター国府台病院(現、国立国際医療センター国府台病院)での臨床研修を経て、国際医療福祉大学三田病院に勤務。その後、2009年に新宿駅前クリニック皮膚科内科泌尿器科を開設。
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