美容室でシャンプーをしてもらう際、「どこか、かゆいところはありませんか?」と声をかけてもらった経験のある人は多いでしょう。なかには心の中で「かゆいところはあるけれど、一生懸命洗ってくれているから別にいいか」と気を使って「大丈夫です」と答えている人もいるかもしれません。
もしこれが単なるかゆい場所を探しているだけなら、これほど空振りの多い質問が今も多くの美容室で受け継がれているのは不思議なことです。ではこの質問は、本当にかゆいところを聞くためだけにおこなっているのでしょうか。美容室「Affinity」代表の岡田充さんに話を聞きました。
単なるかゆみ確認ではない、3つの目的
ーシャンプー中に「かゆいところ」をなぜ聞かれるのでしょうか?
単なるかゆみ確認だけでなく、主に3つの目的があります。
1つ目は「頭皮の健康状態や肌への相性のチェック」です。かゆみや刺激の有無から、頭皮の炎症やシャンプー剤によるかぶれが起きていないかを確認しています。
2つ目は「洗い残しのダブルチェック」です。耳の後ろや襟足、頭頂部といった洗い残しやすい死角にアプローチするための合図になります。
そして3つ目が「発言の許可証」としての役割です。顔に布をかけられ、声が出しにくい状況のなかで、お湯の温度や力加減などの要望を、お客様が気兼ねなく口にできるようにするための心遣いなのです。
ー「ない」と答える客と細かく指示する客、どちらがありがたいですか?
どちらでも全く問題ありません。実際、約8割のお客様が「特にないです」と答えられる印象を持ってますし、無理に探す必要はありません。
一方で、本当にかゆい場所があるときは、遠慮なく「頭のてっぺん」や「左の耳の後ろ」などと具体的に指定してもらえると、技術者としてはありがたいです。
ピンポイントでかゆい場所を教えていただければ、そこを重点的に洗い上げることができ、シャンプーの満足度を高められます。「細かく言うと迷惑かも」と気を使う必要は一切ありません。
ー触れてほしくない場所や避けるべき答え方はありますか?
避けるべきなのは、気を使って本音を隠してしまうことです。実は、それこそが美容師にとってもっとも避けたい状況です。
本当に何もかゆい場所がなければ、素直に「ない」と答えて全く問題ありません。反対に、お湯が熱かったり力が強すぎたりしたとき、遠慮して言わずに我慢してしまうのではなく、本音を正直に話してもらうことが何より大切です。
お客様が希望や違和感を正直に口にし、プロが技術でそれに応える。この素直なやり取りの積み重ねこそが、お互いの信頼関係を作ることにつながります。忖度せず、自然体で本音を話してもらうのが1番の正解です。
ーシャンプー中に「信頼できる美容師」を見分けるコツはありますか?
技術を通じて「安心感」を伝えてくれるかどうかが大きなポイントです。
例えば、指先が頭皮に触れる最初の瞬間から、力を抜いてリラックスできるような優しいタッチであること。爪を立てず指の腹を密着させ、こちらの呼吸や体の力みに合わせて力の強弱をコントロールしてくれる美容師は、お客様に寄り添う技術を持っているといえるでしょう。
さらに、耳の後ろや襟足といった洗いにくい死角も、お湯を顔に飛ばさず地肌まで丁寧に洗えるかも重要です。技術の高さだけでなく、対話から得た情報やこちらの様子を繊細に察知し、手を通じて安心の空間を作り出せる美容師こそが、本当に信頼できるプロだといえます。
◆岡田充(おかだ・みつる) 美容師/ヘアサロン『Affinity』代表
20年経験を経て2024年大阪府茨木市で開業。年齢による髪のお悩み(エイジングヘアケア)白髪、うねり、ヘアダメージ、ハリ、コシ、ツヤを取り戻し健康的な髪を保つためのヘアケアや、なるべく髪のダメージを抑えての施術を得意とする。