Aさん(30代女性会社員)の職場に、シニア人材として60代男性社員のBさんが入社してきました。これで雑務で忙しい状態から解放されると喜んでいたAさんですが、Bさんは「前の会社ではこれが普通だった」が口癖で、あまり指示を素直に聞いてくれません。
また、まだ職場に慣れていないにもかかわらず、若手社員へ指示を出したり「最近の若い子は飲み会に来ないよね」など、距離感の近い発言を繰り返したりしています。そんなBさんを見てAさんは「悪い人ではないけれど、正直かなり気を遣う」と疲弊してしまうのでした。
このようにシニア人材と若手・中堅社員の間では、なぜこうしたすれ違いが起きるのでしょうか。また、世代間トラブルを防ぐには、どのようなコミュニケーションが必要なのでしょうか。シニア・経営層に特化したエージェント事業を展開している株式会社プロ人材機構の代表、高橋啓さんに話を聞きました。
立場認識のズレとお互いの“仕事の普通”の違いが原因
ーAさんのように世代間のズレを感じるケースは、なぜ起きてしまうのでしょうか。
1番大きいのは、“立場認識のズレ”です。シニア側は長年、“教える側”“判断する側”として働いてきました。そのため、悪気なくアドバイスや指示が先に出てしまう。一方で若手側は、「まだ入社したばかりなのに、なぜそこまで踏み込んでくるんだろう」と感じてしまうんです。
また、世代によって“仕事の普通”も違います。Slackで済む話を電話で長く話す、逆に若手は短文化しすぎてシニア世代にとって冷たく見える。どちらも悪気はありませんが、“仕事の礼儀作法”が違うんです。
ーシニア側が悪気なくやってしまいがちな言動には、どのような特徴がありますか。
典型的なのは、Aさんのように「前の会社ではね」が口癖になっていることです。シニア世代にとっては経験共有でも、若手からすると「今のやり方を否定されている」と感じることがあります。
また、“隙あらば自分語り”も起きやすいですね。本人は役立つ話をしているつもりでも、まずは相手に興味を持って聞く姿勢のほうが、若手との関係はうまくいきやすいです。
さらに、昔は当たり前だった“飲みニケーション”も、今は「勤務時間外の追加ミッション」と感じる人もいます。重要なのは、“自分基準の親切”になっていないかを意識することなんです。
ー世代間ギャップによるストレスや衝突を防ぐために、双方が意識すべきことを教えてください。
大切なのは、「察してほしい」をやめることです。シニア側は「経験がある=今の会社でも正解」ではないと理解する。若手側も、「古いやり方」ではなく、「別の成功体験を持っている人」と捉えるだけで、かなり変わります。
また、シニア側から「教えて」と素直に言える人ほど、組織になじみやすい印象があります。世代間ギャップは、対立ではなく、お互いの強みを組み合わせることで“組織の厚み”にも変えられるんです。
◆高橋 啓(たかはし・あきら)株式会社プロ人材機構 代表取締役社長
1968年山口県生まれ。千葉大学卒業後、人材会社にて、経営・シニア層専門のヘッドハンターとして国内トップクラスの実績(累計面談人数3万人超)を残す。初代ヘッドハンターサミットMVPなど受賞歴多数。2024年に株式会社プロ人材機構を創業。年齢の壁を越え「経験資本」の社会実装を目指している。