リモートワークが当たり前になったいま、仕事でミスやトラブルが起きたとき、あなたはオンラインで謝りますか? 「オンラインで謝罪するのは失礼」なのか、「一秒でも早く対応できるならアリ」なのか――世代によってその感覚には大きな違いがあるようです。実際に、そんな“感覚のズレ”が原因で板挟みになった中間世代の声を聞きました。
めったに起こらない重大ミスが…
Aさん(関東在住、40代、会社員)は中堅メーカーに勤める事務職です。数人の事務スタッフで営業フロア全体の業務を支えるほか、新入社員のOJT研修にも関わっており、部署内のトラブル事情にも詳しいといいます。
そんなAさんの職場で、めったに起こらない重大ミスが発生してしまいました。
担当営業のBさんが出張中に臨時の発注があり、通常は営業が入力する発注システムを新入社員が代行しました。ところが、電話でのやりとりでよく似た商品コードを聞き間違え、そのまま入力してしまいます。本来であれば申込後に発注内容を確認し、先方の承認を得てから正式発注する流れですが、今回は急ぎだったため工程をスキップして進行しました。さらに在庫管理の担当者が有給中で、代理のスタッフもミスに気づかず、商品違いのまま納品される結果に。ミスとイレギュラーが重なって結局納期が遅れ、取引先に損害が発生することになってしまいました。
「とりあえずオンラインで」ってどうなの?
ミスが発覚したのは、出張から戻った営業担当がシステムを確認したときでした。Aさんは「すぐに電話で報告して、お詫びと対策の相談に伺わなければ」と真っ先に考えたそうですが、若手営業のBさんは「とりあえず、オンラインミーティングを設定しますね」とひとこと。Aさんは「こんなに重大なミスなのにオンラインミーティング?」と驚いたといいます。しかし、先方の若手担当者もあっさりオンラインでの打ち合わせを受け入れたそうです。
「1秒でも早く対応する」という姿勢には一理あると感じつつも、Aさんはこの対応が本当に正しいのか、今後どうやって若手を指導すべきか迷いがあったといいます。
しかし、この後、もう一悶着がありました。
現場の担当同士はいずれも20代の若手スタッフでしたが、先方の担当者が発注ミスを上司と担当役員に報告したところ「なぜ未だに詫びを入れに来ていないのか」との声が上がり、かつて担当していた営業部長に直接連絡が入ったのです。Aさんの上司である部長はそこで初めてトラブルのことを知ることに。
驚いた部長はすぐにBさんへ「虎屋の羊羹を持ってお詫びに行くように」と指示したところ、Bさんは「え?もう謝罪して値引きすることになりましたけど……?」と困惑。なぜ先方の上司が怒っているのか理解できない様子だったといいます。
若手担当者は「少しでも早く対応策を」と考え、役員側は「まずはすぐに謝罪に訪れるべき」と考えていたのです。Aさんは、どちらの意見も理解できるからこそ、どう指導すべきか、自分たちが変わるべきなのか悩んでいるそうです。
年代で大きく感覚が違う調査結果
このように世代間で感覚が異なることは、調査でも明らかになっています。博報堂生活総合研究所が2025年6月に公表した「生活DX定点」調査によると、「仕事上の謝罪」をオンラインで済ませても構わないと考える割合は、10代〜20代で33.6%にのぼるのに対し、50代〜60代では14.8%と倍以上の差がありました。
こうした感覚のズレこそが、Aさんのような中間世代にとって、悩みの種になっているのかもしれません。
【参考】
▽博報堂生活総合研究所|「生活DX定点」
https://seikatsusoken.jp/newsrelease/24168/