40代の会社員、古賀よりこさん(仮名)は、遠方で一人暮らしをする70代の母親を心配しています。以前、母親が暮らす地域を台風が通過した際、停電の影響で数時間にわたって連絡が取れなくなったことがありました。
「何度電話してもつながらず、無事なのか分からない時間がとても不安でした。結局、数時間後に連絡が取れましたが、また同じことが起きたらどうしようと思いました」
この経験をきっかけに古賀さんは、災害が起きてから家族だけで安否を確認しようとするのではなく、平時から母親の近くで頼れる人や相談先を確認しておく必要があると考えるようになりました。離れて暮らす高齢の親を災害時に孤立させないためには、平時からどのような相談先や見守り体制を確認しておけばよいのでしょうか。
停電時は固定電話やスマートフォンが使えないことも
光回線を使う固定電話は、停電によってルーターなどの宅内機器への電源供給が止まると、原則として利用できません。スマートフォンも、基地局の停電や通信の混雑、端末の充電切れなどによってつながりにくくなる場合があります。連絡が取れなければ、親が自宅にいるのか、避難しているのかを家族だけで判断するのは困難です。
古賀さんは、連絡手段だけでなく、親の様子を確認できる人や相談先を事前に決めておく必要があると考えました。
親と連絡が取れないときに備えて確認したい相談先
災害時に離れて暮らす親の安否を確認するには、遠方の家族だけで対応しようとせず、地域の相談先や協力を頼める人とつながっておくことが大切です。古賀さんはまず、母親が住む地域を担当する地域包括支援センターに相談することにしました。
◇地域包括支援センター|高齢者と家族の相談窓口
地域包括支援センターは、市町村が設置する高齢者と家族の総合相談窓口です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどが配置され、介護や生活上の困りごとの相談に応じています。
相談しただけで災害時の見守り体制が整うわけではありませんが、母親の生活状況を伝えることで、利用できる制度や地域の関係機関を確認できます。介護認定を受けていない場合でも相談できます。
◇民生委員|地域の身近な相談相手
民生委員は、厚生労働大臣から委嘱された地域福祉のボランティアです。住民の立場で生活上の相談に応じ、必要に応じて行政や福祉機関につなぐ役割を担っています。ただし、民生委員は地域のボランティアとして活動しており、すべての高齢者の安否を日常的に把握できるわけではありません。
また、活動内容や災害時の対応は、地域によって異なります。担当する民生委員への連絡方法は、母親が住む市区町村の福祉担当窓口などで確認できます。
◇自治体の見守り制度|対象や支援内容は地域ごとに異なる
自治体によっては、一人暮らしの高齢者などを対象に、見守り事業や避難行動要支援者名簿を設けています。
ただし、対象者や登録方法、支援内容は自治体によって異なります。また、名簿に登録しても、災害時の安否確認や避難支援が必ず行われるとはかぎりません。個人情報の取り扱いの制約上、本人の同意が得られない場合、支援者へ情報が提供されないこともあります。
そのため、親が対象になるか、実際の登録の手続き、そして災害時に実際にどのような支援が期待できるのかを、あらかじめ自治体の高齢福祉や防災の担当窓口へ確認しておく必要があります。
◇近所の人|無理のない範囲で協力を相談する
近所に親の様子を気にかけてもらえる人がいれば、連絡が取れないときの手掛かりになります。
ただし、安否確認を当然の役割として頼むのではなく、親本人の意向を確認したうえで、「連絡が取れないときに、可能な範囲で様子を気にかけてもらえないか」と相談することが大切です。家族の連絡先を伝える場合は、親と相手の同意も確認します。
連絡が取れないときの相談先を事前に決めておく
古賀さんは、母親と連絡が取れないときに備え、近所で声をかけられる人や地域包括支援センター、自治体の担当窓口を確認しました。母親とも、連絡がとれないときの対応や、家族への連絡方法について話し合ったといいます。
災害時、遠方の家族がすぐに駆けつけられるとはかぎりません。親が住む地域で利用できる見守り制度や相談先を確認し、連絡が取れないときに誰がどこへ連絡するのかを決めておくことが備えになります。
制度や支援内容は、自治体によって異なります。まずは親の住む地域の地域包括支援センターや、市区町村の高齢福祉、防災の担当窓口に確認してください。
【出典】
厚生労働省「地域包括支援センターについて」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/link2.pdf
政府広報オンライン「地域の身近な相談相手『民生委員・児童委員』」
https://www.gov-online.go.jp/article/201305/entry-8263.html
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。