巣材をくわえて、せっせと巣箱へ戻ってきた一匹のクリハラリス。ところが、いざ中へ入ろうとしたところで、ぴたりと動きが止まってしまいました。
東京都町田市にある小規模動物園「町田リス園」の公式Xアカウント「NPO法人町田リス園 公式(@risuen_official)」が投稿した動画が、注目を集めています。
クリハラリスは、アジアに広く分布するリスで、日本では特定外来生物に指定されています。動画に映っているのは、巣材を集めて自分の巣箱に戻ってきたリスと、その巣箱に入り込んでいた別のリス。巣材をくわえて帰ってきたところ、自分の巣箱にはすでに別のリスが入っていたようです。
巣材をくわえたまま、右往左往するようなリス。一体、この後どうなったのでしょうか。飼育員の柳瀬美帆(やなせみほ)さんにお話を伺いました。
帰宅したら、巣箱にまさかの侵入者
動画の冒頭、巣箱の屋根の上には、巣材をくわえたリスの姿があります。口いっぱいに巣材をくわえたまま、巣箱の入り口である丸い穴をのぞきこむリス。頭から中へ入ろうとしますが、途中でぴたりと動きが止まります。
どうやら、巣箱の中に他のリスがいることに気づいた様子。リスはしばらくのあいだ、どうしたものかと考え込んでいるかのようです。
やがて巣箱から抜け出すと、屋根の上でしばし茫然と立ち尽くします。すると、先ほどの巣箱の穴から、別のリスがひょっこり顔をのぞかせました。どうやら、すぐに出ていく気配はなさそうです。それでも、巣材をくわえたリスはあきらめません。気を取り直したように、再び巣箱の上へ。もう一度、穴をのぞきこみ、中へ入ろうとします。しかし、中のリスと顔を合わせると、また屋根の上へ――。
くわえていた巣材をいったん下ろし、ついばむように整えたり、転がした巣材をくわえ直したり。まるで「どうしよう」と考えているようにも見える仕草が続きます。しばらくして、リスは巣材をくわえたまま、また巣箱の入り口へ向かいます。いったん巣材を脇に置き、中に他のリスがいないか確かめるようにのぞきこむと、再び巣材をくわえて中へ入ろうとします。
ところが、またしても動きは停止。巣箱の中には、まだ別のリスがいました。結局、巣材をくわえたリスは屋根の上へ戻り、巣箱に入れないまま動画は終わりました。
投稿には、「かわいい」「めっちゃ困惑してる」「新しいお家見つかりますように」「留守にする方が悪い。絶対に出るもんか、という横取りさんの気迫」など、リスたちのやりとりに引き込まれた人たちからの声が寄せられました。
なぜ他のリスの巣箱に入るのか
柳瀬さんによると、クリハラリスにも縄張り意識はあるものの、他のリスに比べると比較的ゆるい方だといいます。クリハラリスのオスは、行動する範囲が他の個体と重なることも多く、平然と他のリスの巣箱に入るような行動が見られるそうです。
「争いにまで発展するかどうかは、その個体の状況によります。シマリスなどは縄張り意識が強いため、すさまじい争いになることもありますが、クリハラリスがよその巣箱に入ることはめずらしくありません。一年を通して見られる行動ですが、繁殖や寒さで巣箱を使うリスが増える春と冬には、比較的よく見られるかもしれません」
一方、巣箱に入られた側のリスが、必ず強く抵抗するとは限りません。
「子育て中であれば巣箱を防衛することもありますが、単に雨宿りをしていただけという状況であれば、自分が入っていた巣箱からあっさり立ち去ることも少なくありません」
今回の動画をきっかけに、クリハラリスという呼び名についても、柳瀬さんは丁寧に説明してくれました。
「台湾に定着した亜種は一般に『タイワンリス』と呼ばれますが、これは通称で、正式な和名は『クリハラリス』です。日本に流入した個体の多くはタイワンリスではないかと言われているものの、野生個体をすべて遺伝子検査しているわけではなく、形態的な特徴だけで100%台湾由来とは言い切れません」
こうした性質には、もともとの生息環境も関係しているようです。温暖でエサ資源が豊富な一方、天敵も多い東南アジアの森などでは、資源のある縄張りを守るよりも、比較的密集して生活し、誰かが天敵に気づくと警戒音で周囲に知らせ、一斉に隠れるという生存戦略をとっているといいます。
「鳴き声が大きく、多様な鳴き声を持っていることも、クリハラリスの特徴です。ニホンリスと比べると、クリハラリスはやや大きく、綱渡りやぶら下がりが得意なずん胴体型。一方、ニホンリスはジャンプ力があり、後肢が発達しています」