キャンバスに何色もの色を厚く塗り重ね、リラックスした日常の中の猫を描いた油彩画が猫好きの間で静かな注目を集めている。描いているのは、油彩画家・神谷綾乃さんだ。多摩美術大学を卒業後、会社員として働きながら制作を続け、2025年から本格的に作家活動を開始。現在は神奈川県小田原市を拠点に活動している。
幼いころから猫と一緒に育ち、現在は10歳のキジ白と2歳の三毛の2匹と暮らす神谷さん。幼稚園のころに描いた絵も、中学生のときに初めて描いた油彩画も猫がモチーフだったといい「自由に描くとき、気づけばいつも猫を描いていた」(神谷さん、以下同)と振り返る。
これまでに5匹の保護猫と暮らし、老衰だけでなく、中には生まれつきの病気で1歳を迎える前に亡くなった子もいた。「愛猫と過ごす当たり前の日常は、私にとってかけがえのない時間。それは永遠ではないという思いが根底にあります。だから、今の幸せをしっかり実感するために描きたい」と神谷さんはいう。
そんな神谷さんのまなざしは、依頼を受けて描くオーダーメイド作品にも表れる。滋賀県湖南市のお好み焼き店「ビールとハイライト」は、大の阪神ファンの渡辺新一さん、江里奈さん夫婦が営み、スポーツ好きが集う店として知られる。そこで看板猫を務め、お客さんから人気なのがサビ猫の「ロク」だ。先日、10歳の誕生日を迎えたお祝いにと、江里奈さんの妹が神谷さんに写真を渡して依頼。いま、店内には神谷さんが描いたロクの油彩画が飾られている。
「いただいた写真を見ると目力があり、複雑な柄や個性的な顔立ちで、描くのは難しかったですけど、写真から飼い主さんや周囲の方々から愛されているなというのが伝わってきました。オーダーメイドの場合は、依頼主さんからエピソードやその子への想いをよく聞きますね。いただいた写真には猫ちゃんの撮り方に飼い主さんの気持ちがにじみ出ていたり、猫ちゃんの気持ちや性質を読み取れたりします。情報を拾い上げていって、その子の存在を私の中で少しずつ実感していくんです」
対話するように対象を観察し、練った色を重ね、その場に流れる空気や、自分が感じた心地よさの中にある「そこにあることの確かさ」を描いていく。
「その瞬間を、そのときの気分で生きるという価値観や考え方は猫から教えられたもので、今では私の根本にある気がします。今を生きている感覚そのものを画面で捉えようとしていることが、私の制作スタイルかもしれません。 気持ちよさそうに寝ているというだけで、じんわりとした幸せを感じます。激しい感動や圧倒的な美しさより、身近で生活に根付いた感覚。ここにいてもいいんだよと、当たり前に思える時間や空間を、そのまま作品にできればと思っています」
【神谷綾乃さん関連情報】
▽インスタグラム
@kamiya_ia
▽note
https://note.com/dear_medee