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万博後も日本に残り続けるチェコ人アーティスト「日本は“精神のふるさと”」 世界へ広げたいテーマとは?

橋本 菜津美 橋本 菜津美

2025年大阪・関西万博の閉幕後、多くの海外関係者が帰国する中、日本に残り活動を続ける一人の外国人がいる。

それはチェコ館で各国要人の公式訪問を取り仕切る儀典長(プロトコル責任者兼副コミッショナー・ジェネラル)を務めたアーティストのVit(ヴィート)さん。

Vitさんはチェコ共和国・プラハ出身。共産主義体制下のチェコスロバキアに生まれ、1989年の民主化革命「ビロード革命」にも参加。ロンドンやベルリンなどヨーロッパ各地で生活し、ゴルフ業界でのビジネスやテレビ解説者、MCとしても活躍してきた。2012年からはドバイに拠点を移し、国際的な環境でキャリアを重ねている。

Vitさんに万博の思い出、そして今も日本に残り続ける理由を聞いた。

ーー万博ではどのような経験が印象に残っていますか。

Vit:万博での出会いはすべてが「一期一会」でした。そしてこの日本の考え方に深く心を動かされました。二度と同じ瞬間は訪れない、その価値を大切にする文化に強い影響を受けました

ーー万博終了後、多くの関係者が帰国する中、Vitさんは日本に残る道を選びました。なぜ日本に残ろうと思ったのでしょうか。

Vit:日本は、私に再びアートへ向き合うインスピレーションを与えてくれました。そして、人々と平和への想いを分かち合いたいと強く感じたのです。万博の“平和・理解・協力”という価値を、これからも伝えていきたいと思いました。

◇ ◇

Vitさんは現在、ライブペイントパフォーマーとして「Circle of Peace(平和の輪)」という活動を各地で展開している。日本の墨を使い、大きな円を描く約25分間のパフォーマンスで、観客自身が内面と向き合う参加型アートだ。この活動についてもお話を聞いた。

ーー「Circle of Peace」とは?

Vit:このパフォーマンスは、観客が自分自身の内なる平和と再びつながる時間です。「世界平和」と言うと大きな目標ですが、私は「平和な個人が集まってこそ、平和な世界が生まれる」と信じています。まず自分の内側に平和を見つけることが、世界全体への貢献につながるのです。パフォーマンス中、参加者にはこの静けさを体験してもらいます。

ーーこの作品の大きな特徴は、完成した作品をそのまま残さないことにありますよね。最後にキャンバスを小さくちぎり、観客に配る…これにはどんな意図が?

Vit:作品は所有するものではなく、分かち合うものです。その断片を持ち帰ることで、誰もが大きな円の一部であることを感じてほしいと思っています

ーードバイで長年暮らした経験も、現在の活動に大きく影響しているそうですね。

Vit:ドバイは非常に国際色豊かな都市で、世界中のあらゆる文化と出会うことができました。その中で、人は皆つながりや理解を求めていると気づいたのです。このメッセージは国境を越えて届けるべきだと感じています

私は中東やウクライナの情勢についても、決して遠くで起こっている問題ではないと感じています。私は「一人ひとりが平和であれば、世界は平和になる」と信じています。まず自分自身の中に静かで穏やかな場所を見つけることが大切です。アートの静かな力が、言葉や立場を超えて、人と人の間の境界をそっとつなぐことを願っています。

ーーこれまで日本で30回以上のパフォーマンスを実施。日本での活動で印象に残っている出来事は?

Vit:チェコ館での最初の「Ichigo Ichie」パフォーマンスで、観客が涙を流しているのを見たとき、「本当の目的を持ったアートは人の心を深く動かすことができる」と実感しました。また、日本の学生たちとの対話も印象的でした。後日、60ページもの感想をもらい、深く心を動かされました。

日本は私にとって“精神のふるさと”のような場所。最も好きところは「今この瞬間」をかけがえのないものとして大切にする日本の文化です。美しさだけでなく、日本人の深く静かな内省力にも敬意を抱いています。観客との対話、特に若い世代との意味のある対話を通じて、調和や細部へのこだわりを大切にする社会だと感じています。日本は、アートが「完成した絵」だけでなく、その制作過程に込める平和や誠実さこそが大切だと教えてくれました。

◇ ◇

万博という一大イベントは終わった。しかし、その中で生まれた価値や出会いは、今も確実に続いている。

日本に残り続ける一人のアーティストVitさんの活動は、「平和」という普遍的なテーマを静かに、そして確かに伝えている。一人ひとりの内側から始まる平和。その小さな円は、やがて世界へと広がっていくのかもしれない。

「日本で受け取った精神性を、再び世界へ届けていきたい」。そう語るVitさんは、今後も日本各地での活動を大切にしながら、平和の輪を広げていくという。現在、活動の拡大に向けたクラウドファンディング「に安らぎを、家庭に笑顔を、世界に平和を。一期一会のひと時から平穏の輪を広げたい」も実施中。その歩みに、引き続き注目したい。

◇ ◇

クラウドファンディング「に安らぎを、家庭に笑顔を、世界に平和を。一期一会のひと時から平穏の輪を広げたい」:https://camp-fire.jp/projects/935172/view

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