岡山市北区奉還町で約60年間親しまれ、一時は閉店した「画廊喫茶くる実」。元店主の知人の娘が引き継いでまもなく1年を迎える。土日曜日のみの開店だが、昭和の純喫茶の雰囲気が残る落ち着いた空間と、酸味のある軽い飲み心地のコーヒーが人気を集めている。
くる実を受け継いだのは備前市出身で、鳥取県智頭町で古民家カフェを運営している納夢(のうむ)安紫(あんじ)さん(26)。「長く続いた店を誰かに託したい」との前店主の声に応える形で昨年5月に再オープンした。
納夢さんによると、くる実は前店主夫妻が1964年に創業した。夫は画商で、店内には多くの絵画が飾られ、絵画展も開かれていたという。夫が亡くなってからは妻が1人で店を守ったが高齢のため引退。店の改装を相談した建築家の娘の納夢さんが引き継ぐことになったという。
高校時代から喫茶店やコーヒーが好きだったという納夢さん。智頭町でのカフェ運営は、デザイン会社と契約して取り組んでいる地方創生企画。自分の店を開くという夢を目指していたところに、くる実を引き継ぐ話が舞い込んだ。
立地の良さや昔ながらの純喫茶の雰囲気が気に入り、店名はそのままに、内装は以前の雰囲気を残して修繕。平日は智頭町に暮らし、週末、実家に帰省し、家族に手伝ってもらいながらくる実を営業する。
ドリンクメニューはコーヒーや紅茶、ミックスジュースなど約10種類。こだわりのコーヒーはドリップ、フレンチプレス、クレバードリップの3種類から抽出方法を選べる。豆はその時々に仕入れたものを提供し、酸味のある軽い飲み心地を意識して淹れている。「純喫茶で軽めのコーヒーという意外性を楽しんでほしい」という。食事は牛すじカレー、たまごサンド、ケーキなど約10種類。通常に加えて季節ものや旬の食材を使ったメニューもある。
画廊喫茶の歴史を踏襲して2階をギャラリーに改装し、国内外のアーティストの企画展を開いている。これまで岡山県を拠点に活動するイラストレーターや写真家のほか、ドイツやイスラエルの画家らを取り上げた。「珍しい海外アーティストをきっかけに美術に興味を持ってもらえたら」と話す。
現在は看板メニューの開発や画塾、アートイベント開催など、「新たなくる実」に向けたアイデアを構想中だ。「お客さんが刺激を受けたり、交流の輪が広がったりするような店を目指したい」と意気込む。
原則土日曜日のみ。午前10時~午後6時。詳細は店のインスタグラム(@art_gallery_kurumi)。