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50代男性、生活を犠牲にして「母」を一人で介護 「忙しい」と葬儀にも来なかった妹に母の遺産を相続させたくありません…何か方法は?【行政書士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

50代のAさんは、認知症を患った母親を自宅で5年間、1人で介護しました。深夜の徘徊や排泄の介助に追われ、自身の仕事や私生活を犠牲にする過酷な日々でした。

一方、遠方に住む妹は「仕事が忙しい」を言い訳に一度も帰省せず、金銭的援助も一切なし。母親が寂しそうに妹の名前を呼ぶ夜も、妹は電話すら寄こしませんでした。さらに驚くべきことに、妹は母親の葬儀すら「休めない」と欠席したのです。

四十九日が過ぎた頃、態度は急変しました。突然、遺産の半分をきっちり受け取る権利があると主張し、事務的な連絡を送ってきたのです。母の最期にすら立ち会わなかった妹の身勝手な振る舞いに、Aさんは言葉を失うほどの衝撃と激しい憤りを感じています。

献身的な介護が報われず、放置していた者が得をする事態は許されるのでしょうか。北摂パートナーズ行政書士事務所の松尾武将さんに聞きました。

親不孝でも相続はく奪は困難

ー「葬儀に来ない」「介護をしない」といった親不孝な態度は、法的に相続欠格や廃除(相続権のはく奪)の理由になりますか?

相続欠格は、被相続人を殺害したり、遺言書を偽造したりといった民法第891条各号に列記された事由がある場合に限定されます。

また、相続人の廃除は、被相続人に対する虐待や重大な侮辱、あるいは著しい非行がある場合などに認められますが、多くの場合被相続人との相続的共同関係の破壊が判断基準とされており、単に「介護をしない」「葬儀に来ない」といった不誠実な態度が、裁判所によって廃除事由とされる可能性は低いものと考えます。

日本の法律では、親不孝がただちに相続権のはく奪にはつながらないようです。

ー長年の介護など、被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人が主張できる「寄与分」とは、どのような制度ですか?

寄与分とは、相続人の中に、被相続人の事業を助けたり、療養看護を行ったりすることで、被相続人の財産の維持または増加に特別な寄与をした人がいる場合、その貢献度を評価して、その人に対して特別に相続財産の持分が与えられる制度です。

具体的には、遺産総額からまず寄与分を差し引き、残りの遺産を分割した後に、寄与した人にその分を上乗せします。これにより、何もしなかった相続人と、財産の維持・増加に貢献をした相続人との間の公平性を図ります。

ーAさんのように「自宅での身体介護」をしていた場合、寄与分は認められやすいですか?

自宅での身体介護は寄与分として認められる可能性がありますが、ハードルは決して低くありません。ポイントは特別の寄与と言えるかどうかです。無報酬での夫婦間や親子間の扶助など通常期待される程度の世話を超えた特別な貢献であることが求められます。

しかし、Aさんのように「5年間」「認知症の介護」を「つきっきり」で行っていた場合、本来ならプロのヘルパーを雇うべき状況でその費用を節約し、財産の減少を防いだと評価される可能性があります。

寄与分の算定にあたっては「療養看護の報酬相当額×看護日数×被相続人との身分関係を考慮した割合」が基準となりますので、介護日記や主治医の診断書、介護保険の要介護度がわかる書類など、介護の程度と期間を証明する客観的な証拠を揃えることが重要です。

◆松尾武将(まつお・たけまさ) 行政書士
長崎県諫早市出身。大阪府茨木市にて開業。前職の信託銀行員時代に1000件以上の遺言・相続手続きを担当し、3000件以上の相談に携わる。2022年に北摂パートナーズ行政書士事務所を開所し、相続手続き、遺言支援、ペットの相続問題に携わるとともに、同じ道を目指す行政書士の指導にも尽力している。

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