銀行通帳といえば、かつては紙タイプが当たり前でしたが、最近では新規発行に手数料がかかる銀行も増え、Web通帳を利用する人が増えています。とはいえ昔から使っている口座については、今も紙の通帳を使い続けている人も多いのではないでしょうか。繰り越しのたびに通帳が増え、引き出しや押し入れに何冊も眠っている、そんな人も少なくないはずです。
年末の大掃除をしていた45歳の主婦のBさんも、その1人でした。押し入れの奥から出てきたのは独身時代に使っていた通帳や結婚後に繰り越した通帳、すでに使っていない口座のものなど合わせて10冊以上あったそうです。もう必要ないと思ったBさんは、シュレッダーにかけようとしました。
しかし「これ、本当に捨てて大丈夫なの?」と違和感を覚えたAさんは手を止めます。通帳は単なる残高確認の道具ではなく、お金の履歴そのものです。給与が振り込まれて貯金が増え、引き落としが行われた記録が時系列で残っています。それをすべて処分してしまって、本当に問題はないのでしょうか。
元銀行員でファイナンシャルプランナーの橋本ひとみさんに繰り越した通帳の扱いについて話を聞きました。
大きなお金の取引のある通帳は、7~10年の保管が安心
ー古い通帳は捨てても問題ないのでしょうか
法律上、個人が通帳を何年保存しなければならないという決まりはありません。ただし通帳は残高確認のためだけではなく、後からお金の流れを説明するための資料として使われることがあります。
特に給与の振り込みや事業収入、まとまった資金の入出金、ローン返済などが含まれる場合、過去の履歴を求められるケースがあります。そのためこうした取引が記録されている通帳については、よっぽどの理由がない限り直近7〜10年分を目安に保管しておくと安心です。
ー古い通帳を捨ててしまったことで、実際にトラブルになったケースはありますか
相続の場面で、亡くなった方の過去の入出金履歴を確認できず、銀行に取引履歴の開示を依頼されたケースがありました。履歴の取得自体は可能ですが、期間が長くなるほど手数料や時間の負担が大きくなります。この時は10年以上さかのぼる依頼だったので、手続きに時間がかかったうえ、費用が10万円前後になりました。
また、通帳が残っていなかったことで資金の流れを証明できず、相続や財産分与をめぐる争いに発展したケースもあります。調停や訴訟に進んだ結果、弁護士費用などを含めて最終的に100万円以上の負担になった例もありました。通帳が残っていればそもそも争いにならなかった可能性が高いため、安易に捨ててしまうのも良くないという事例です。
ー最終的に処分する場合、安全な通帳の捨て方はありますか?
表紙だけでなく、口座番号、氏名、印影が分かる部分を必ず裁断してください。磁気ストライプ部分も個人情報が含まれるため、細かく切る必要があります。
シュレッダーは縦横両方向に裁断できるものが望ましく、不安な場合は金融機関や自治体が行っている溶解処理サービスを利用するとより安全です。
◆橋本ひとみ(はしもと・ひとみ)
銀行勤務12年を経て、現在は複数企業の経理代行をおこなう。法人営業や富裕層向け資産運用コンサルティングの経験に加え、ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士の資格を持つ。