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仏様がドローンで飛んでる!?「演出ではなく宗教行事の一つに」企画した仏師の思い

中将 タカノリ 中将 タカノリ

阿弥陀や菩薩たちが宙を舞う「ドローン仏」がSNS上で大きな注目を集めている。

「ドローン仏阿弥陀二十五菩薩来迎が当たり前の時代はすごそこまで来ています。」

とその模様を動画で紹介したのは京都市上京区にある工房「土御門仏所」の仏師三浦耀山さん(@biwazo)。

阿弥陀二十五菩薩来迎とは、阿弥陀如来が観音菩薩、勢至菩薩など二十五の菩薩を従えて来迎する姿を描いた図。如来や菩薩たちが雲に乗り宙を舞う姿で描かれることが多いが、たしかにこのドローン技術を駆使すればそれがリアルに再現できるというわけだ。

三浦さんにお話を聞いた。

ーー動画はどちらで撮影されたものでしょうか?

三浦:11月30日に浄土宗龍岸寺(京都市下京区)で開催された超十夜法要にて撮影したものです。

ーードローン仏を開発された経緯は?

三浦:ドローン仏は、仏教における「阿弥陀来迎」を立体で表現したいという思いから始まりました。

阿弥陀如来が諸菩薩を伴い、極楽浄土から雲に乗って迎えに来る来迎の世界…雲に乗って宙に浮かぶさまを立体で表せないかという試みは、実は古くから行われてきました。たとえば、京都・宇治の平等院鳳凰堂には、雲に乗った「雲中供養菩薩」が52躯あり、堂内の高い壁面に掛けることで、空中に浮遊する姿が表現されています。

ほかにも、雲座という雲形の台座に仏像を乗せたり、欄間彫刻に宙を舞う仏を刻んだりと、歴代の仏師たちはさまざまな方法で「浮かぶ仏」を表現してきました。では現代において、この来迎の世界観をよりリアルに表現する方法はないだろうか。そう考えたときに浮かんだのが、「ドローンに仏像を乗せて飛ばす」という発想でした。実際に宙を舞い、しかも動くことで、来迎の情景を体感的に表現できるのではないか。そうした思いから、2018年にドローン仏の試みを始めました。

ーー11月30日の超十夜法要はその発表の場だったのですね。

三浦:ドローン仏への思いを知り合いの浄土宗龍岸寺池口住職にお伝えしたところ、2018年11月に龍岸寺さんで行われた超十夜法要で用いていただけることになりました。そのときは3台のドローン仏を、一人一台ずつコントローラで操作しながら飛行させました。以降、毎年少しずつ台数を増やし、試行錯誤を重ねてきました。

そして11月30日に行われた超十夜法要では、18台のドローン仏が、住職と来場者約50名の方々の念仏の中、宙を舞い来迎を実現することができました。

来迎図には、阿弥陀如来が25人の菩薩を伴って来迎する「阿弥陀如来二十五菩薩来迎図」があります。ドローン仏はこの26体による阿弥陀来迎を完全な形で表現することを目標としており来年にはその実現を予定しています。

ーー実現までに苦心した点は?

三浦:まず直面したのが重量の問題でした。仏像が重いとドローンの飛行に支障が出てしまいます。木彫の仏像ではどうしても重量がありすぎるため3Dプリンタを活用することにしました。

まずは仏像を木で彫刻し、次に彫り上げた仏像を3Dスキャンします。そして仏像の内部を空洞化して漆を塗り、その上から金箔を押します。漆塗りは塗師(ぬし)、金箔押しは箔押師(はくおしし)という京都の職人さんに、それぞれお願いしています。

ドローン仏に乗せる仏像は「本物」でなければならないという仏師としての思いがあります。軽量化のために3Dプリンタという現代技術を使っていますが、それ以外の工程はすべて本物にこだわっています。

またドローン仏はお寺の本堂という宗教空間で飛ばしてこそ意味がある、という思いがありました。しかし当初、屋内で安定して編隊飛行できるドローンは私の調べた限り見つからず、途方に暮れていました。

そんな中、2021年にSNSで知り合ったドローン会社の方から「屋内で編隊飛行できる機体ができましたよ」と連絡をいただき、2022年の龍岸寺超十夜祭にて、その方の協力のもと8台のドローン仏を編隊飛行させることができました。その後も毎年少しずつ機体を増やし今年は18台のドローン仏による来迎が実現しました。

池口住職には、初期の頃からドローン仏の発展に全面的なご協力をいただいています。ドローン仏が飛ぶ際のライティングや音楽などの演出についてもお願いしている部分が多く、ドローン仏を単なる演出ではなく、宗教行事の一つとして受け入れてくださっていることに感謝しています。

ーー投稿に大きな反響がありました。

三浦:来迎図や雲中供養菩薩を知っている方は、いよいよリアルに仏像が宙を浮く時代が来たと好意的に言ってくださってます。一方で「仏教を遊びにしている」、「ドローンの音がうるさい」などと批判的な方もいます。新しいことに挑戦するときは賛否両論が当たり前だと思っていますので、仕方のないことかなと思っています。

今年は万博でもドローン仏を飛ばしたり、中学校の公民の教科書に掲載されたりといろいろと注目される機会が多かったです。少しずつ定着しつつあるとは思っています。

◇ ◇

SNSユーザー達から数々の驚きの声、感激の声が寄せられた今回の投稿。

なお今回の話題を提供してくれた三浦さんは来年、ドローン仏阿弥陀如来二十五菩薩の実現を予定しているそう。ご興味ある方はぜひ今後のSNS発信にご注目いただきたい。

三浦耀山さんプロフィール
1973年埼玉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。在学中にみうらじゅん氏といとうせいこう氏の共著「見仏記」を読み仏像好きになる。大学卒業後一度はサラリーマンになるも仏像好きが嵩じて退職。25歳で滋賀県大津市の大仏師のもとに弟子入りをし、13年間にわたり仏師の修行をする。2012年に独立。京都市上京区の古い町家を工房に改装して​​​​​​​仏像彫刻、仏像修復、仏像彫刻教室を営む。
Xアカウント:https://x.com/biwazo
土御門仏所公式ホームぺージ:https://miurabutsuzo.com

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