地方公務員として働くAさんは、3歳の娘を持つ父親です。娘が生まれたばかりの頃の激しい夜泣きをきっかけに、翌日の仕事への影響を懸念しAさんだけ別室で寝るようになりました。別室での睡眠はAさんにとって至福の時間となり、夜泣きに邪魔されることなく、好きな動画や読書を楽しむ習慣が定着しました。
当初は子どもが寝た後に妻がAさんの寝室を訪れ、夫婦の夜の生活は保たれていましたが、いつからかそれはなくなります。今ではAさんが妻の寝室に行っても、「子どもが隣にいるから」という理由で拒否されてしまうのでした。この状況が続けば、2人目の子どもは望めない焦燥感がAさんを襲います。
心の中では、妻との夜の生活を復活させ、もう1人子どもが欲しいという願いを持っています。しかし現在の冷え切った関係では、どうすることもできません。Aさんが現状を打破するにはどうしたらいいのでしょうか。夫婦関係修復カウンセリング専門行政書士の木下雅子さんに話を聞きました。
別室で楽をする夫へのしっぺ返し
ーなぜ、妻に拒絶されセックスレスになってしまったのでしょうか?
夫のAさんが夜泣きから逃れるために「別室で寝る」という目先の楽な道を選び続けた結果、夫婦の間にすれ違いが生まれたことに起因しています。Aさんは別室で「至福の時間」を過ごしていましたが、妻はワンオペ育児の中で睡眠不足や孤独感に苛まれていました。
妻からすれば、夫だけが安眠とプライベートな時間を享受している状況は不公平であり、夫に対する不満や愛想尽かしにつながります。妻は夫への愛情と信頼が薄れたため、夫婦の夜の生活を拒否するようになり、レス状態に陥ったのだと考えられます。
ー寝室について、妻は子どもと就寝、夫が別室は良くないのでしょうか?
このケースのように夫が「楽をしたい」という理由で別室を選んでしまうと、それは夫婦の心の距離を広げることにつながります。子どもが3歳くらいまでは親の添い寝が必要かもしれませんが、それ以降は夫婦と子どもの寝室は分けるべきだと考えています。
しかし、一度別室で寝る楽さを覚えてしまうと、元の同室に戻ることを人間は苦痛に感じるため、別室が常態化しやすくなります。別室を続けるのであれば、なお一層、夫側からの配慮や労いの行動が求められることになります。
ー妻との夜の生活を復活させる良い方法はあるのでしょうか?
夜の生活を復活させる前に、まずAさんは妻からの信頼を失っているという現実を受け入れる必要があります。夜の営み以前に、日頃の夫婦関係を修復することが最優先です。妻に寄り添わせるのではなく、Aさんが妻に寄り添う姿勢を見せなければなりません。
妻のワンオペ状態が続けば、妻は夜の営みよりも睡眠を優先したいと考えるのは当然のことです。日中の妻の負担を減らす具体的な行動を通じて、信頼回復に努めることが、夜の生活復活への遠回りなようで一番の近道となります。
◆木下雅子(きのした・まさこ)
行政書士、心理カウンセラー 大阪府高槻市を拠点に「夫婦関係修復カウンセリング」を主業務として活動。「法」と「心」の両面から顧客を支える。