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遺族年金「5年で打ち切り」に、不安で怯える主婦 子どもがいる家庭も支給停止に?【ファイナンシャルプランナーが解説】

八幡 康二 八幡 康二

会社員の夫と小学生の子ども2人の4人家族で暮らしているAさん(40代専業主婦)は、ある日、体調不良の夫に付き添って病院に行きます。最初は特に問題がないと思っていたAさんでしたが、一般的な検診だけでは終わらず後日に精密検査を受けることが決まり、徐々に不安になっていきます。そして検査を終えた後、医師から告げられたのは夫の体にガンが見つかり、かなり進行しているという話でした。

この医師からの話を聞いたAさんは、夫のこれからの看病や子どもへの説明など、さまざまな事が頭を駆け巡ります。その考えのなかにはもちろん、夫が死んでしまった後の生活も含まれていました。

そんな中、ネットで目にしたのが「遺族年金、5年で打ち切りへ」という見出しのニュース。この見出しを見たAさんは、「子どもがいる私も対象になるの?」と驚き、血の気が引いていきます。

実際、2028年4月から大きく変わる遺族年金制度について、「5年で打ち切り」という言葉だけが独り歩きし、不安に感じる人も少なくないでしょう。では、この遺族年金制度は本当に「改悪」となるのでしょうか? 制度の真実とその背景について、ファイナンシャルプランナーの橋本ひとみさんに聞きました。

遺族年金制度は「改悪」ではない

ー2028年から変わる、遺族年金制度の概要について教えてください。

そもそも遺族年金制度には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。今回の改正は、遺族厚生年金についてです。改正のポイントは2つあり、ひとつは、これまで“夫を亡くした妻”が主な受給対象だったところを、2028年4月からは男女の壁が取り払われ、“妻を亡くした夫”も対象となることです。

もうひとつは、受給の扱いがこれまでの無期限型から、ケースによっては“原則5年”という期間制限が設けられる形に変わるという点です。「5年で打ち切り」と言われているのはこのことですね。

ー「5年で打ち切り」は、すべての人が該当するのでしょうか?

いいえ、そうではありません。誤解を招きやすい部分ではありますが、子どもを抱える遺族の場合、これまで通り子が18歳(又は一定の条件下では20歳)まで支給されます。

「5年で打ち切り」になるのは、子どもがいない場合です。これまでも、20代で死別した場合、子どもがいなければ遺族厚生年金の受給期間は5年間でした。それが、30代以降においても、統一したルールに変わると思って頂いたらいいのではないでしょうか。

ーでは「子どもがいる場合」の支給額・期間はどうなりますか?

たとえば、夫が会社員で厚生年金に加入していて、受給条件を満たした場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されることになります。

遺族基礎年金は年額おおよそ83万円+子の加算(1人あたり約23万9000円)です。遺族厚生年金は加入実績によって変動しますが、子が18歳になった年度の3月31日まで支給されるケースが通常となります。

ー制度の変更を踏まえてAさんが準備しておくことはありますか?

Aさんの場合は、制度の変更による影響は少ないと思っていいでしょう。とはいえ、もしもの事を考えると、自分の家庭がどのような支援を受けられるのかを早めに確認しておくことは必要です。

遺族基礎年金は子どもがいれば受け取れますが、遺族厚生年金は夫の厚生年金加入実績によって金額が変わります。年金定期便を確認することで、簡易的な試算が可能なため、一度目を通してみてはいかがでしょうか。

◆橋本ひとみ(はしもと・ひとみ)
銀行勤務12年を経て、現在は複数企業の経理代行をおこなう 。法人営業や富裕層向け資産運用コンサルティングの経験に加え、ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士の資格を持つ。

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