息子が私立の中高一貫校に入学したNさん(東京都・40代)は、保護会の役員に選ばれました。保護者としてはできれば避けて通りたい役職と会合の場ですが、学校の内情をほとんど知らないまま臨んだその日、思いがけず目にしたのは、キラキラと輝く“陽キャ”な保護者たちの姿でした。陰キャ気質だというNさんが、そこで感じた驚きと心境の変化とはどのようなものだったのでしょうか。
役員選びは「やります」か「やりません」の選択肢
Nさんの一人息子は、私立の中高一貫校に入学が決まりました。各種書類提出や保護者会など、慌ただしい4月を過ごしていた頃、早々にやってきたのが保護者会のクラス役員選びでした。
事前に配布された書類には、「①役員をやります」「②誰もいなければやります」「③できません」という選択肢がありました。もちろん、①に丸をつける勇気はなく、③を選ぶことで、非協力的な保護者だと思われるのも嫌で、結局②に丸をつけて提出しました。
「まあ、他にやる人がいるだろう」と思っていた矢先、学校から電話がかかってきました。電話口の先生は柔らかい口調でこう告げました。
「今回①に丸をつけた方がいらっしゃらなかったので、②に丸をつけてくださった方全員にお願いしています」
覚悟はしていましたが、やはりショックでした。電話を切ったあと、ため息をつきながらスケジュール帳に「役員会」と書き込みました。
初めての役員会で見た「陽キャワールド」
初めての役員会の日。会場には父親や、きれいめカジュアルな母親がズラリと並んでいました。父親の参加が想像以上に多く、これまで公立小学校で見てきた光景との違いに驚かされました。
役員会はPTA総会から始まり、その後、学年別役員グループ、事前アンケートで割り振られた係別役員グループの2回に分かれ、各所で自己紹介を行いました。驚いたことに、皆の前で自己紹介する場面が2度もあったのです。
自己紹介といっても、ただ名前と子どもの学年を述べるだけではありません。多くの保護者は、穏やかな笑顔でユーモアを交えたり、学年カラーに絡めたコメントを入れたりして場を和ませていました。父親たちも負けていません。「私はこの学校の卒業生です」「地元の少年サッカーのコーチをしています」などと、爽やかなエピソードをさらりと話します。
その姿はまさに陽キャ。Nさんは自分が陰キャであることを痛感した瞬間でした。
陰キャ母の心境変化
正直に言えば、Nさんは役員を引き受けることになったとき、心の中では愚痴ばかりでした。「なんで私が」「他に誰かいるでしょうに」と、ため息が止まりませんでした。
しかし、実際に役員会に参加してみると、保護者たちの明るさや前向きさに驚かされました。そして、少し羨ましくもありました。
陰キャの私にもできることがあるかもしれない。この役員活動が終わる頃には、今より少しはコミュニケーションに自信がついているかもしれない。周りの役員さんの話を聞いていると、不思議とそんなポジティブな気持ちが湧いてくるのです。
一年間、前向きに頑張ろうと思えた理由
役員会の帰り道、校門を出るときに吹いた風が、いつもより爽やかに感じました。陰キャで、人前で話すことも苦手で、役員なんて本当はやりたくなかったNさん。でも、子育てが一段落し、手持無沙汰になった今、思いがけずポジティブな人たちに囲まれたことで、新しいことへのチャレンジをする時だと背中を押された気がしています。
もしかすると、「誰もいなければやります」と選択したこの経験が、Nさん自身の成長のきっかけになるかもしれません。一度きりの子どもの中高生活。保護者としても、少しでも前向きに関わっていこう。そんなふうに思えた出来事でした。
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お子さんの学校や習い事で出会った印象的な保護者はいますか?
▽埼玉県・40代
クラス保護者会で行われる一人3分程度の自己紹介で、無難に子どもの部活や特技など子どもの紹介するのに、突然自分の特技や推し活の話を始めた保護者、当然3分では終わらず、また次に続く人も連鎖的に自分の話になり、みんなプライベートのネタが豊富だなと思いました。
▽東京都・30代
小学校のPTA役員決めで、場の空気が重くなったとき、あるお父さんが突然『じゃあ俺が会長やります!』と手を挙げました。そのまま仕切り役になり、その場で知り合いを副会長や書記に誘導し、テンポよく決め、会議を30分で終わらせました。最後は拍手が起きていました。こういう時に手を上げて言える人って、陽キャなんだなと思いました。
▽神奈川県・40代
習い事の発表会で、司会者を買って出た保護者の一人のママ。場をつなぎながら、子どもの紹介、インタビューなど、あまりにもスムーズで場が盛り上がりとても素敵な会でした。司会の仕事をしているかと思ったらそうでもないようで、仕事でもないのにあんなに話せるなんてすごいと思いました。
▽静岡県・30代
子どものサッカークラブで、あるお父さんが「みんな顔を合わせるなら一度飲みませんか?」と声をかけ始め、LINEグループを作って居酒屋を予約。結局チーム保護者の半数以上が参加し、翌週から送り迎えの会話がにぎやかになりました。こういうこと言える人ってすごいですよね。