tl_bnr_land

二児の母の歌姫・新妻聖子、「最初の子育ては、寝られない日々が永遠に続くような気がしたけれど」……今は?

小野寺 亜紀 小野寺 亜紀

ミュージカル界屈指の歌姫として活躍し、今年はじめに二児の母となった新妻聖子さん。出産後2カ月目で仕事復帰、12月18日にクリスマスディナーショーを予定するなど、多忙な日々を送る彼女に、仕事と育児の両立についてなどインタビューしました。

2003年に『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ役で初舞台を踏んで以来、ミュージカルをはじめとする数々の舞台や映像に出演。その歌声を体感した人々から、SNSでも「圧倒的な歌唱力」「歌がうますぎる」「想像以上の声量と豊かな表現力」など絶賛されるように。

順調にキャリアを築いている印象をもたれているようですが、第一子の育児では苦労し、その経験があるからこそ今の彼女が存在するとのこと。

1月の出産から2025年も充実した日々を送る彼女が、「笑顔でいる方が楽しい」と前向きになれた過程を語ってくれました。

第一子に聞かれた「僕と赤ちゃん、どっちが好きなの?」

――二人目のお子さんが生まれて、第一子のときとの違いはありますか?

長男も次男も静かな部分と“モンスター”な部分はあるんですが(笑)、第二子は夜通し寝てくれるんです。私の心の余裕が違うからなのか、いい意味で“ほったらかし育児”なんですよね。

上の子の世話でつきっきりにはなれないので、安全面に気を付けつつ、どっしり構えて育てていたら、わりとどっしりした赤ちゃんに育っています。

――上のお子さんは、赤ちゃんにどんな反応を?

下の子をとても可愛がってくれています。でも一度だけ「ママは僕と赤ちゃん、どっちが好きなの?」と聞いてきたことがあって。

もちろん「どっちも好きに決まってるでしょ」と答えたんですが、いつも頑張ってお兄ちゃんをしてくれているので、「ただ、君のほうがママと6年長く一緒にいたから、そこだけは弟くんは一生追い越せないんだよ。だから、その分ちょっと好きかな」と言ったら、すごく喜んでいました。7歳だけどまだまだママに甘えたい子供なんだなと思って。本当に可愛いですね。

――今年発売されたアルバム『MUSICAL MOMENTS 2』に収録の、『アニー』の名曲「トゥモロー」には、イントロに下のお子さんの笑い声が収録されていて、何度も聞きたくなる魅力に溢れています。

あれは自宅で、私のスマホで録音したんです。赤ちゃんの笑い声って本当に癒されますよね。6年半ぶりの赤ちゃんはびっくりするほど可愛いくて、日々「可愛い」を連発しながらほっぺにチューしまくっています。第一子の育児のときは、なかなか鼻歌が出るメンタルではなかったのですが、今は結構歌っちゃってますね。

「まいごのまいごのこねこちゃん~♪」とかも、だんだんテンションが上がるとキーが高くなって、「ニャンニャン、ニャーニャーン!!」と最後はかなりソプラノで歌っちゃったりして。次男がそれを見てケラケラ笑っています(笑)。

赤ちゃんは母親にとって「未知との遭遇」で不安だらけ  

――お母さんたちは育児でさまざまな悩みを抱えていますよね。新妻さんが特に大変だったことは?

第一子は私自身“命からがら”という切迫感がありました。やはり最初の育児は大変だと思います。次に何が起こるかわからないし、寝られない日々も永遠に続くような気がしました。第一子から育児を楽しめている人は、歳の離れた兄弟がいて慣れてるか、精神年齢が相当高い方なのかなと(笑)。

新生児の小ささは「可愛い」と思うと同時に、「こんなフニャフニャした子が本当に育つの?」という怖さもありますよね。あとはやはり、夜寝られないことが一番辛いし、そこでギャン泣きされると、当時はもう気が狂いそうになってました。

――(インタビュー中の部屋に救急車のサイレン音が聞こえてくる)

例えば、このサイレンが耳元でずっと鳴っていたら気が動転しますよね。赤ちゃんの泣き声の周波数ってこれに近いものがあって、それを密室で浴び続けるとやはり追い込まれるものです。

だから今育児で疲れているママたちには、「もう無理」と思ったら、一旦赤ちゃんを安全な場所に置いて、トイレにこもるなど、「少しだけ逃げてもいいんだよ」と伝えたいです。

睡眠さえ取れるようになれば、泣き声もちゃんと愛しいと思えるメンタルが戻ってくるし、産後であちこち痛くて眠くて、「辛い」と思うのは当たり前。いきなり完璧な母になれるわけじゃないし、そう思う自分を責めないでほしい。

「あなたは十分頑張っているよ」と、過去の自分を含めたすべてのママに伝えたいです。 

――仕事との両立はどうやって乗り越えられたのでしょう?

第一子の時は、睡眠不足が重なり、そこに子供の風邪もうつった状態でコンサートツアーを強行していたら、生まれて初めて声帯を痛めてしまったんです。

歌手にとって歌声を奪われるのは最大の苦しみで。声帯は一度痛めてしまうと治るまでに時間がかかります。仕事を降板したりキャンセルをするということがそれまでは無かったので、やるせなさと申し訳なさ、自分への怒りもあって、メンタルがどん底まで落ちました。

「もう以前のようには歌えないかもしれない」と諦めかけたくらい喉の状態が悪化したこともありましたが、「それがなんだ!私の人生は続くんだ!」と開き直ったら、不思議と声もV字回復。

自分の中で一度なにかが終わり、そこから這い上がってこられたことで、今はもう何も怖くないというか、感謝しかないんです。「もう歌えない」と思っていたのに、また歌えているんですもん。もはや今は「余生」「ボーナスステージ」のようなものだと思っています。

――深いお言葉ですね。母になると特に頑張りすぎたり、自分を褒められなくなったりすることがあると思います。

そうですね。喉を痛めてネガティブモードに入っていた時は、「コウペンちゃん」というコウテイペンギンのキャラクターのシールをスマホとかに貼って、「ちゃんと朝起きてえらい!」とか書いてあるのを見ながら、「そうだよね、私、偉いよね」と言い聞かせていました(苦笑)。

渦中にいる時にはわからなかったけど、振り返ってみて思うのは、多くのことは起こるべくして起こっているということ。今は、少し心を乱されるハプニングが起きても、「これもすべて将来の自分が書いた脚本を生きているだけ、必要だから起こっているんだ」と自分に言い聞かせています。起きたことを信頼して、自分の気持ちを落とし込み、ジタバタしない。

例えば今は、予防を頑張った末に風邪をひいても、自分を責めたり落ち込んだりはしません。「あちゃー」とは思いますけど、ひいちゃったものは仕方がない。すぐには治らないのだから、笑顔でいる方が楽しいですよね。不機嫌でいるのは周りにも迷惑だし。

まぁ毎朝上の子を時間通り学校に送り出すために、「早くしなさい!」と鬼のように怒ったりはしますけど。「もう出ないと間に合わないよ」と言っているのに、いきなり塗り絵を始めたりするので、小1男子は理解不能すぎて(苦笑)。日常のバタバタはあるとしても、幸せをきちんと噛み締め、なるべくご機嫌でいたいなとは思っています。

二児の母となっても変わらないことは……

――そして今年17年ぶりのミュージカル・アルバム『MUSICAL MOMENTS 2』を発売されました。収録曲「命をあげよう」のメイキング映像を観たのですが、とても感動的でした。

実はレコード会社の方が「二児の母になった新妻聖子の『命をあげよう』を聴きたい」と言ってくださったことが、このアルバム制作のきっかけになりました。

――「命をあげよう」は、『ミス・サイゴン』で新妻さんが演じられたキムが、幼い息子を育てようとする強さと愛を歌い上げる名曲ですね。舞台で歌っていた時(2004年・2008年・2009年・2012年)と、出産を経た今とで、曲の受け止め方は変わりましたか?

実を言うと、変わっていません。逆に、子供を持っていなかった当時の自分の役の解釈が間違っていなかったことがわかりました。あの時感じた「この小さな子を命がけで守らなければ」という湧き上がる思い。実際に子供を持った今でも、同じ感情が湧いてくるので、答え合わせができたような気持ちです。

ただ、歌手や俳優として、20代から40代に至るまでの変化は劇的です。見た目はもちろん、声の深さも変わる。重心の位置が変わるというのか、同じ声質でも少しずつ変化しているはずで、年代ごとの味わいがあります。

それこそ熟成した味噌みたいなものですよ。年月での味わいが変わっていくので、そういう聞き比べをしていただけるのも、シリーズものの醍醐味だと思います。レコード会社の方には、本当にうれしいご提案をいただいたとあらためて感じています。

忙しいときは重なる――人生「引き寄せの法則」を実感

――レコーディングを始めたのは、第二子の出産から3カ月後だったそうですね。

はい。初日は“エンダー”(「I Will Always Love You」、ミュージカル『ボディガード』より)を収録したんですが、諸事情により、赤ちゃんを抱っこ紐で抱えながらアカペラ部分を歌いました。

良い感じに歌えた!と思ったんですが、赤ちゃんの寝息がしっかり入ってしまっていて、結局ボツに(苦笑)。今思えば産後まだドタバタな時期にレコーディングが始まったので、かなりカオスでしたね。

 

――公私ともにお忙しい日々だったのですね。

なぜか結婚や出産といった大きな出来事がある時期って、いろんなことが重なるんですよ。「引き寄せの法則」なのかもしれません。17年の間にいくらでもタイミングはあったはずなのに、“今”だったんですよね。

6年前にリリースした『Colors of Life』というCDも、第一子出産後のリリースでした。年中「アルバム出そうよ」と言っているのに、なぜか出産のタイミングとかぶるんです。

――不思議ですね。今回のアルバムは、どんな内容を目指されたのでしょうか?

ミュージカルに詳しくない人でも楽しめる“音楽性の高い1枚”にしたいという思いは、第一弾から変わりません。

私自身、ミュージカルに携わる前は、『キャッツ』の「メモリー」と、『オペラ座の怪人』の曲くらいしか知らず、デビュー作『レ・ミゼラブル』のオーディションを受けるまで、この名作のことも知らなかったんです。ですから誰が聴いても良いと感じる曲を選びたいと思っていました。

17年の歩みのなかで演じた役の持ち歌もかなり増えましたが、今回は“いい曲”であること、そして日本語音源が存在しない楽曲を優先しました。

未音源化の曲を資料として残すことで、10年後、20年後に若い世代の方がミュージカルを学ぶ際、このCDがきっかけになればという思いも込めています。

初の京都でのディナーショー「生音の波動がより伝わるはず」

――お忙しい日々のなかで、音楽活動や舞台活動を続けられ、12月18日には「ウェスティン都ホテル京都」でクリスマスディナーショーを開催されます。

ディナーショーの開催自体4年ぶりなのですが、京都でさせていただくのは初めてです。お客様が一年頑張ったご褒美にこのショーを選んでくださるのなら、それに見合う喜びをお届けしたいと思っています。

――曲目は「命をあげよう」「私だけに」「I Dreamed a Dream」「Time To Say Goodbye」などが予定されていますね。

ミュージカル歌手は、お客様に作品の世界観などを生声で届ける“語り部”だという責任を感じています。皆さまの聴きたい曲をしっかり味わっていただけるような構成を心がけて。宝塚からも近い関西の地なので、数年に一度ぐらいしか歌わない『エリザベート』の「私だけに」も歌わせていただきます。

ディナーショーはコンサートよりもお客様との距離が近いので、生音・生歌の波動がより伝わるはず。トークもたっぷり交えて、「この曲何だろう?」とならないよう説明もしながら、MCではフレンドリーな雰囲気でお話しできたらと思っています。ディナーショーというと敷居が高いと思われがちですが、ゴージャス感は保ちつつ、リラックスして楽しんでいただける内容にしたいです。

 ◇ ◇

これまで演じてきた楽曲を中心に、全10曲を収録した17年ぶりのミュージカル・アルバム『MUSICAL MOMENTS 2』は、2025年8月にリリース。新妻さん自身による充実したナンバー解説付き。通常盤CDは3500円。2023年「サントリーホール」で開催したデビュー20周年記念コンサート『Seiko Niizuma 20th Anniversary Concert Tour ~HARMONY~』のライブ映像を収録したBlu-rayもセットの、Deluxe Edition(初回限定盤)は7000円。

京都でのクリスマスディナーショーは12月18日(木)、ディナー18:30~・ショー20:00~、「ウェスティン都ホテル京都」にて開催。ひとり38500円。販売はホテルの公式サイトにて。

■Official Website: https://www.seikoniizuma.com

■YouTube: https://www.youtube.com/@NiizumaSeiko

■Label Website: https://www.jvcmusic.co.jp/seikoniizuma

■クリスマスディナーショー:https://miyakohotel.shop/shop/products/seikoniizumadinnershow20251218_1

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース