幼い頃に親や友達からかけられた外見に対する何気ない一言は、無意識のうちに心の奥底にこびりついてしまうものです。その影響で、コンプレックスとの上手な付き合い方に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。一方で、自分の子どもからの純粋な言葉に、ふと気持ちが浄化された経験を持つ人もいます。
このようなコンプレックスとの付き合い方について、漫画家の水谷アスさんが描いた作品【残念な外見への『思い込み』を捨てるまでの話。】がX(旧Twitter)に投稿されると、多くの反響を呼びました。
水谷さんは子どもの頃から、一重まぶたや低い鼻、拡がる癖毛は、親や周囲の人から“残念なこと”だと言われ続けていました。さらに視力低下の影響で眼鏡をかけるようになった自分を鏡で見ると“残念の詰め合わせ”だなと感じてしまうようになったそうです。
自分の容姿に自信が持てない日々を過ごしていたある日、水谷さんはふと二重メイクに挑戦します。さらに眼鏡を外してコンタクトレンズを着けると、鏡に映る自分を見て「ふたえいいじゃん」とつぶやくのでした。
合わせて縮毛矯正にも費用を掛けて、自身の容姿への不安を少しずつ軽減させていきます。しかしそれと同時に雨でメイクや縮毛矯正の効果が消えてしまうことに恐怖を覚え、必死に維持するようになっていきます。
素の容姿に自信が持てないまま大人になった水谷さんは、結婚し授かった我が子の顔に自分と同じ顔の特徴を受け継いでいることに複雑な心境が描かれています。
子ども優先で自分の身なりに時間を割けない生活を続けていたある日、気分転換もかねて久しぶりに二重メイクをしてみることに。その様子を見ていた子どもにメイクの感想を尋ねてみたところ「普段のお母さんの方がかわいいよ」と意外な反応が返ってきました。
それ以降、お風呂の時や化粧する時間がない時など、すっぴんの状態で外出する際には子どもから「お化粧してない方がかわいい!」と頻繁に言われるようになります。その言葉は、今まで“残念なこと”と思っていた顔へのコンプレックスを和らげる魔法となり、長年施していたアイプチによる二重メイクを止めるきっかけになったのです。
コンプレックスの考え方が変わる美容師の言葉…
別の日、二重メイクを止めたことで化粧の手間が減ったため、水谷さんはせめて自分の癖毛はもっとメンテナンスをしようと考えます。そこでいつも行っている美容室で相談しようとしましたが、近日での予約ができず、髪質改善に特化した別の美容室を予約するのでした。
その美容室では癖毛矯正をしてもらおうとしていたものの、水谷さんは美容師から「髪の毛は神経こそ通ってないけど、あなたの“からだなのよ」や「そもそもクセ毛ってそんなにいけないものなのかしら」と語られます。
この言葉に水谷さんは、見た目の印象をよくするためには必ず癖毛を真っ直ぐにしなければならないという固定概念を真正面から指摘されハッとします。思い返すと、今まで水谷さんの考える“残念なこと”について掛けられてきた言葉は、否定的な内容だけではありませんでした。なかには褒めてくれた言葉もあったはずなのに、それを否定して受け取らなかったのは自分自身だったことに気付かされるのでした。
コンプレックスを抱えた経験がある読者からは「私の事描いてくれてます?ってくらい同じで途中まででもなんか泣きそう…」など、多くの共感の声が寄せられています。
他にも「若年時特有の同族嫌悪だと思います。若い頃自分の顔が嫌いでしたが昔の写真をみると今は何の嫌悪感もない。むしろ、かっこかわいいとさえ思う」という考察を述べる読者も。さらに「6歳になった長男、すっぴんの私の方が好きって言ってくれるんだよね。赤ちゃんの時からずっと親に笑いかけてくれてさ、子どもこそ無償の愛くれるよね」と、水谷さんと同じように子どもから掛けられた言葉に救われた体験を語るコメントもあがっていました。
そこで、独身の頃と子育てを経験した現在のコンプレックスに対する心境の変化などを、作者の水谷アスさんに聞きました。
ーコンプレックスを抱えていた頃と今とでは、ご自身の気持ちにどのような変化を感じていますか?
価値観なんて人それぞれ違うのに、何で特定の相手が良しとしている容姿でないといけないと思っていたんだろう…と悪い夢から醒めたような気持ちです。
自分に向けてだけでなく、他の人を見るときも容姿に対してフラットな視点になれたような気がしています。
ーお子さんから「普段のお母さんの方がかわいいよ」と声を掛けられたとき、どのように思いましたか?
正直、最初はお世辞ではないか、と思ってしまいました。でも毎日毎日あまりにしつこく言われ続けたので、本気なんだな…と。
娘にとって可愛いお母さんになれているならそれで十分だと思ったし、そもそも私は誰のためにお化粧をしてるんだろう?と不思議な気持ちになりました。結果、元々お化粧が好きだった訳ではないし、やめちゃおう、と。
ー最後に、これまで「残念」な言葉を拾ってしまいコンプレックスを抱えている人たちへメッセージをお願いします。
容姿のことだけでなく、あらゆるところで自分を否定してくる言葉はあると思います。
でも否定してくる人の意見は、世界の全てではありません。否定する人の言う『みんな』なんて、単純にその人に似た価値観を持つ人々の寄せ集めで、人の価値観はもっと多彩です。
私はずっと、褒めてくれる言葉や前向きな解釈を「そんなわけない」と受け取らず、わざわざ自分を否定する言葉を正しいと信じて受け取る生き方をしていました。でも、受け取る言葉は選べるんです。
「そんなわけない」と受け取り拒否している大切なことばはありませんか。そのことばを素直に受け取ってみてください。きっと前より少しでも自分を好きになれるはずです。
<水谷アスさん関連情報>
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