社宅復活の兆し、新設着工が前年比30%増 お得に住めるけど、“転職=家を失う”リスクも【漫画】

沼田 絵美 沼田 絵美

人手不足が続く新卒採用市場では、企業が「初任給アップ」や「働きやすさ」のPRに力を入れています。その一環として、再び注目されているのが「給与住宅(会社や官公庁が給与の一部として提供する住宅や制度)」、いわゆる“社宅”です。就職氷河期以降に縮小・廃止が進んでいましたが、2024(令和6)年の建築着工統計では、社宅の新設が着工戸数前年比30.2%増の6613戸と増加傾向にあります。しかし「社宅があって良かった」と思う人もいれば、「社宅に入って後悔している」人もいるようです。

社宅で良かった派「毎月数万円分は浮いていると思います」

関西在住のAさん(20代、会社員)は、新卒入社と同時に社会人生活をスタートしました。実家から会社まで片道約2時間かかるため、会社の規定により新入社員には借り上げ社宅が用意されました。

借り上げ社宅とは、一般の賃貸物件を会社名義で契約し、社員が費用の一部を給与から引き落とす仕組みです。

Aさんの同期で、実家から通勤が難しい10人も同じ新築ワンルームマンションに住んでいますが、フロアはバラバラで、互いの部屋を行き来することもほとんどなく、プライベートが制約されていると感じることはないといいます。

Aさんがネットで同じマンションの募集情報を確認したところ、自己負担分は家賃の4割、つまり一般的な賃貸相場の半額以下。さらに敷金・礼金・更新料はもちろん、毎月のインターネット利用料や駐輪代、水道料金まで会社負担だそうです。

「立地も良いですね。会社まで地下鉄で3駅で、適度に近いんです。残業や飲み会で遅くなっても、同期と一緒にタクシーを割り勘すれば1000円かからずに帰れます。もし全額自己負担だったら、毎月7~8万円は余計にかかっていたと思います」

聞けば聞くほど、うらやましくなる話です。最近は物価高の影響で家賃も上がりつつありますから、今後さらに「社宅の強み」が出てきそうです。

社宅で後悔派「会社辞める=家を失う」

Bさん(関東在住、30代、会社員)は入社3年目に転勤になり、転勤者に用意される「自己負担3割・自分で選べる社宅」に住みはじめてから4年になる中堅社員です。

転勤当初は「社宅なのに自分が好きな物件を選べて、家賃上限もこのあたりでは十分な広さの物件を借りられるし、むしろ転勤してお金が貯められるようになってよかったな」と思っていたそうです。

この社宅がBさんにとっての「足枷」になると気づいたのは、30代になって「このまま同じ会社に勤めていていいのか」と転職願望が出てきたことがきっかけでした。

「今住んでいるのは借り上げ社宅です。もういつ次の転勤の声がかかってもおかしくないタイミングですが、今の支社が実は大学時代に暮らしてた街で、やっぱりここがいいなと思って。転職活動しようと求人は探してるんですけどやっぱり地方都市なので給与は低めなんですよね。しかも今住んでいるのは社宅。転職したら絶対出ないといけないじゃないですか。正直この家賃を全額自分で負担できる転職先はなかなか見つからなくて……社宅に慣れてしまうと、こんなに次の行動が『束縛』されることになるとは思っていなかったです」

確かにそれだけのメリットがあると、なかなか次も同条件を求めるのは大変ですね。

会社にも社員にもある社宅の「一番大きなメリットとは」

社宅と似た制度に「住宅手当」があります。どちらも社員の住居に対する福利厚生ですが、仕組みには大きな違いがあります。

社宅……会社が所有者もしくは契約者になり、社員から一定の費用を受け取る
住宅手当……社員が所有者もしくは契約者になり、会社から給与の一部として報酬を受け取る

ここで大切なことは「住宅手当」は「給与」であるということです。

つまり、社員はその金額から所得税・住民税・社会保険料などの税金分を負担します。また、企業も社会保険料の企業分を負担します。

税金分だけでなく、水道光熱費やインターネットネット利用料が含まれていたり、引っ越し時の敷金・礼金が不要だったりと、社宅ならではのメリットがあります。福利厚生を比較する際のチェックポイントとしておすすめです。

▽国土交通省|建築着工統計調査報告
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001859940.pdf

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