コクヨのヒット商品「本に寄り添う文鎮」、開発のきっかけは中高生の声…ビジネスマンや読書好きからも支持

小森 有喜 小森 有喜

コクヨの大ヒット文具「本に寄り添う文鎮」。教科書や書籍を開いたままにしておくためのアイテムとして昨年発売し、好評を博している。開発のきっかけ、洗練されたデザインの制作過程などについて同社の担当者に聞いた。

コクヨが運営している文具好きコミュニティーでの、中高生へのヒアリングが開発のきっかけになったという。2021年、オンラインでのミーティングの際に「相棒の文具は何ですか」という問いかけをしたところ、1人の女子生徒が「ブッククリップ」を挙げた。教科書や参考書をはさんで開いたままにしておくために使っているといい、他の生徒からも「私もそうしている」といった声が複数あがった。

「クリップがそうした使われ方をしているという認識はあったものの、ここまで多くの子たちが使っているのかと驚きました」と話すのは、開発担当の清水陽芳さん。クリップだと本が傷つく、ページをめくる際に手間がかかるといった声を捉えることで、「本を開いたまま固定する」ニーズに気付くきっかけになった。

清水さんはこれを受け、さまざまな材料を使って試作を重ねた。棒状の金具をねじで固定したもの、細長い袋に鉄粉を入れたものなどさまざまな試作品を経て、現在の形状にたどりついた。開いた本の曲線に沿う、カモメを思わせるフォルム。置くだけで本をしっかりと抑えこむことができ、ページめくりに手間がかからない。さまざまなジャンルの本を開いた際の曲線を写真に収め、その平均値を割り出して設計したという。

素材や大きさについても試行錯誤し、22年6月に真鍮(しんちゅう)製のものを試験的に数量限定で販売。SNSで大きな反響があった。同社はより手頃な価格で手にとってもらえるようにと新たに鉄製の開発に着手。表面の塗装加工が予想以上に難航したものの、24年に正式な発売にこぎつけた。

同1月に真鍮製(メーカー希望小売価格6000円)、2月に鉄製(同2100円)を販売。真鍮製は約210グラム、鉄製は約195グラムで長さはいずれも24センチ。鉄製は黒とグレーの2色がある。初回の生産分がECサイトで瞬く間に完売するなど反響は大きく、SNSでは中高生のみならずビジネスマンや読書好きなどさまざまな人から歓迎の声があがった。

文具としての便利さだけでなく「インテリアとしても飾れそう」と、デザインに言及する声も目立った。これについて清水さんは「意図的につくり出した曲線ではなく、本を開いた時の曲線をかたどっている。自然に発生する形状だからこそ琴線に触れる部分があるのかもしれないと感じた」と話す。機能性を求めた結果、デザインとしても洗練されたものになったと言えそうだ。

製品誕生のきっかけになった、文具好きコミュニティーの運営に携わる同社の武市陽子さんは「(コミュニティーの中高生から)学校で使っていると先生や友達との会話のきっかけにもなると好評だった。勉強道具としてだけでなく、コミュニケーションツールとしても喜んでいただけているのがうれしい」と話す。

清水さんは「中高生の皆さんの声なしには生まれなかった商品。困りごととして表面化していないものはまだまだあると感じたし、今後もそういったところを解決する企画ができたら良いなと思っています」としている。

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