東急は8月2日、8500系を動態保存することを発表しました。動態保存とは実際に動く状態で保存することを指します。8500系は昭和から平成にかけて活躍した名車です。関東大手私鉄では東武が8000系を動態保存しており、これからも動態保存車が続くかもしれません。
東急8500系は1975年に誕生しましたが、通勤電車として高く評価された電車です。そして、長年にわたり東急の顔、いや首都圏の顔として活躍しました。
それでは東急8500系と同期の関西大手私鉄の車両は何でしょうか。関東と関西の車両を比べることで、東西の設計思想ならびに車両の交換サイクルの差異が理解できます。
東急8500系はどんな車両なのか
東急8500系は新玉川線(現田園都市線)と営団地下鉄(現東京メトロ)半蔵門線との相互直通運転への対応車として、1975年に登場しました。1991年まで製造され、製造車両は400両にのぼります。
車体はステンレス車両となり、ギザギザのコルゲートが特徴です。
基本的には先輩の8000系に準じており、運転台は当時珍しかったワンハンドルマスコンを採用。一つのハンドルで加減速ができ、運転台周りがすっきりとしています。制御機器は界磁チョッパ式で、ブレーキ時に発電した電力を架線に戻す回生ブレーキも取り入れています。車内は通勤電車らしく、片側4扉のロングシートです。
1976年には鉄道友の会選定の「ローレル賞」に選ばれました。つまり、日本最高の通勤電車として評価された、というわけです。
8500系は長らく田園都市線の主役として活躍。後継車両の誕生により2023年1月に引退となりました。一方、秩父鉄道や長野電鉄など、他社へ移籍した車両もあります。
そして、今年秋を目途に8500系を4両編成化した上で動態保存することになりました。今後、多客期やイベント時の臨時列車や団体列車として運行する予定です。
東急8500系と同期の車両は京都線の女王
東急8500系と同期の関西大手私鉄の車両はズバリ阪急6300系です。阪急6300系は京都線の特急専用車両として君臨した片側2扉の転換クロスシート車両です。
東急8500系との共通点は運転台にワンハンドルマスコンを採用したこと。そして、8500系と同じく1976年に鉄道友の会から高評価を受けたことです。6300系はブルーリボン賞を受賞しました。京都線の特急運用からは退きましたが、嵐山線で最後の活躍を続けています。
2年後輩ですと、1977年登場の阪神5001形がいます。5001形は普通用車両「ジェットカー」として、高加減速に優れた車両として知られています。こちらも順次廃車が進み、2024年度中に全廃される予定です。
京阪1000系も1977年生まれです。1000系は今まで紹介した車両と異なり、廃車の車体を流用しています。登場以来、いぶし銀のような存在で京阪を支え、1両の廃車もなく活躍を続けています。
また、関西大手私鉄には1975年以前生まれの現役車両もまだまだたくさんあります。東急8500系と比較すると、廃車が発生しつつも、まだまだ関西にはベテラン車両が多い、という結論に至ります。
また、昭和はどちらかというと関西の方が個性的な電車が多かったことも気づかされます。