真夏を過ぎても食中毒!?「3日目のカレー」に潜む「加熱しても死なない菌」は秋も注意→感染者が語る「地獄の3日間」

東寺 月子 東寺 月子

川遊びでノロウイルスに感染、お弁当を食べて食中毒に……など、今年の夏も菌に感染したというニュースをよく耳にしました。そんな中、先日「カレーで怖いのがウエルシュ菌が原因となる食中毒。ウエルシュ菌が増殖し時間が経過してしまうと熱に強い状態になってしまうので、加熱しても殺菌できないんだそう」というSNSへの投稿が話題となりました。

「ウエルシュ菌」とは!? 加熱しても殺菌できないなんて、怖すぎますよね。

「ウエルシュ菌の特徴としては、熱に強い芽胞をつくること、酸素のない環境を好むことがあげられます。これまでにカレーやシチュー、煮魚、麺のつけ汁など、大量に調理されそのまま室温で冷まされた食品が原因で食中毒が発生してます。また、1件あたりの患者数が多く、大規模発生になることがあります(※1)」

厚生省の「身近な危険 食中毒」というサイトでは、このようにウエルシュ菌への注意喚起がなされています。さらには「近年の統計データでみると11月に最も多く発生していますが、他の細菌性食中毒と比較すると、夏場に特に集中するのではなく年間を通じて発生していることが特徴(※2)」とのこと。

真夏を過ぎたから、そろそろ食中毒は大丈夫と思っていた筆者ですが、食中毒を引き起こすウエルシュ菌は、まだまだ要注意! そしてSNSで話題になったように「加熱すれば大丈夫」っていう考えは危険ということなんですね。

食中毒で「3日間の地獄を味わった」経験者

実際に食中毒になり大変な目にあったことをX(旧Twitter)に投稿したYoshiichi Ouchiさん(@Araigumaraskal)にお話を伺うと、感染源は「スーパーで買ったミートソーススパゲッティを冷蔵庫に2日入れておいたもの」とのこと。冷蔵保存し食べる前に加熱したのですが、感染源となったそうです。

「最初は美味しく食べられましたが、しばらくして吐き気がして、2時間くらいでどんどん吐いてしまいました。さらに、下痢が酷くなり、翌日医者に行きました。一応薬をもらいましたが、自然に治るのを待つしかなかったです。3日間、地獄が続きました」と、想像より速いスピードで体調が悪化するようです。

恐ろしい……しかも、一番恐ろしいのは「食べ物が腐ると酸味や異臭がするから分かりますが、菌に侵された食べ物は、味や臭いに変化がないから分からない。だから食べた時も気づかなかったんです」。もうステルス攻撃のようです。医師の診断では「詳細な検査をしたわけじゃないんですが、多分ウエルシュ菌ではないか、ということでした」。

これに懲りたYoshiichi Ouchiさんは、「2日とやはり日が経っていたこともあったので、買った弁当は冷蔵庫に入れても、翌日食べなければ廃棄するようにしています。カレーなどは小分けにして冷凍し、冷蔵庫で保管しないようにしています」とのこと。確かにトラウマになりますね……。

甘く見てはダメ!子どもや高齢者は重症化することも

Yoshiichi Ouchiさんが感染した可能性があるウエルシュ菌食中毒とは、「ウエルシュ菌がヒトの腸管内で増殖し、芽胞を形成する時に産生されるエンテロトキシン(腸管毒)によって起こります (※3)」とのこと。さらには「ウエルシュ菌は5種類に分類され、ヒトや動物の腸管内、土壌、下水、食品など自然界に広く存在します。自然界に分布するウエルシュ菌は、100℃数分で死滅するものが多いのですが、食中毒は主に耐熱性芽胞(100℃で1~6時間でも生残)を形成する菌によって引き起こされます(※3)」

また、ウエルシュ菌食中毒の原因食品としては、先述したようにカレー、シチュー、及びパーティー・旅館での複合調理食品によるものが多く、特に食肉、魚介類及び野菜類を使用した煮物や大量調理食品で多くみられます。これらの食品中では、加熱調理後、そのまま放置することによって、ウエルシュ菌が増殖します(※3)

感染防止にはここに気をつけて!

町田予防研究所『【大量調理は危険!?】ウエルシュ菌食中毒の特徴と予防方法4つ』によると、「ウエルシュ菌は自然界に広く存在しているため、ウエルシュ菌の食材の汚染を防ぐことは難しく、加熱により芽胞を形成したウエルシュ菌を死滅させることも難しいため、“いかに菌の増殖を抑制するか”が重要なポイントとなります(※2)」とのことです。

①「喫食までの時間を短くする」
前日調理は避け、加熱調理したものは喫食までの時間をなるべく短くする工夫をしましょう。

②「加熱調理後に速やかに10℃以下に冷却するか、55℃以上で保管する」
耐熱性のウエルシュ菌は芽胞を形成して生き残り、加熱調理後50℃程度にまで下がると芽胞が発芽を始め、43~45℃になると最もよく増殖するため、20℃から50℃の温度域を速やかに通過させ、10℃以下に冷却することが望まれます。また、冷却できない場合には55℃以上で保管しましょう。これにより菌の増殖を抑制できます。

③「よく混ぜながら調理する」
よくかき混ぜながら調理を行うことで満遍なく熱をいきわたらせ、確実に栄養型の菌をやっつけましょう。

④「調理後の食材は小分けにして保存する」
調理後の食品は底の浅い容器に小分けにすることで中心部まで素早く冷却できます。そのまま冷蔵庫など、低温で管理された場所で保管しましょう。

(出典:すべて町田予防研究所『【大量調理は危険!?】ウエルシュ菌食中毒の特徴と予防方法4つ』)

以上のことから、食中毒を防ぐには「加熱すれば菌は必ず死滅する」という誤った理解を正す必要があります。食中毒は真夏の外気温だけの問題ではなく、調理したあとの処置方法が大切です。できるだけ菌を食品につけないようにし、さらに増やさないようにすることで、感染を予防するよう心がけてください。カレーやシチューだけでなく、お弁当やテイクアウト品にもご注意を!

Yoshiichi Ouchiさん
https://x.com/Araigumaraskal

【参考資料】
(※1)
厚生労働省【身近な危険 食中毒_細菌:黄色ぶどう球菌・ウエルシュ菌】
https://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/2018/dl/1807_06.pdf

(※2)
町田予防研究所【【大量調理は危険!?】ウエルシュ菌食中毒の特徴と予防方法4つ】
https://www.mhcl.jp/workslabo/hatena/welch01#bb

(※3)
厚生労働省【ウェルシュ菌食中毒】
https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_clostridiumperfringens.pdf

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