都内で会社勤めをしているAさんは、夏休みを利用して家族と電車で旅行に行く計画を立てました。妻と長男を連れて最寄り駅に到着し、予定通りの電車に乗り込んだところ、迷惑なグループ客に遭遇してしまいます。
迷惑なグループ客とは、中年女性のグループで、ひとりの到着が遅れているようでした。人数は5人ほどいて、そのうちのひとりがスマホを確認しながら、遅れてくる人がもうすぐ到着することを伝えています。
グループ客のうち、到着が遅れているひとり以外は電車に乗り込むものの、最後のひとりが一向に姿を現しません。そんななか、ホームに電車の出発を告げる放送が響き、電車の扉が閉まろうとします。すると、グループ客のひとりが電車から半身を出して、閉まる扉を妨害したのです。慌てて駅員が駆け寄って、注意をしようとしますが、その隙に遅れてきた人が現れて、車内に駆け込んできました。
せっかくの家族旅行なのに、出発でケチが付いたと残念に思うAさんは「あのような迷惑行為をする人に罰則はないのだろうか?」との考えます。はたしてグループ客の迷惑行為は罪に問えるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞きます。
ーグループ客が起こした行為は罪になるのでしょうか
厳密にいえば「威力業務妨害」にあたると考えられます。威力業務妨害は刑法234条に定められている犯罪で、法定刑は3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金です。実際、扉が閉まるのを妨害して、罰金20万円を支払うよう略式命令がだされたケースもあります。ただこのケースは、これまでにも類似の事象を39回起こしており、悪質と判断されたことも加味されている可能性があります。
今回のグループ客の場合は、この男性のように何度も繰り返しているわけではないので、起訴されるようなことはないでしょう。
ーもしこのような客をみかけたら注意をした方がいいのでしょうか
法的に注意しなければいけない理由はありません。個人的には、車掌や駅員が気付いているので、駅員に任せたらいいのではないかと思います。
もし注意をしたとすると、その後同じ電車に乗っている間に気まずくなることや、逆上されてご本人だけでなくご家族も危険になる可能性があることも視野にいれ、実行するか考えましょう。
◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないといわれる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。