【サッカー経営学】サンガスタジアム京セラが描く黒字戦略 強みは駅近 施設内に木製アスレチックや保育園を整備

京都新聞社 京都新聞社

 2020年1月に開業した京都府亀岡市のサンガスタジアム京セラ(京都府立京都スタジアム)。J1京都サンガFCの本拠地としてサッカーのイメージが強いが、駅から徒歩3分の立地や最大2万1千人超の観客収容を生かして、子育てやビジネスの拠点、ドローンショーやコンサートといったイベントなど多角化が進んできた。新型コロナウイルス禍で出ばなをくじかれたが、“稼げるスタジアム”へ攻勢に出る。

 市内の山々や旧丹波亀山城の城下町をイメージした木製アスレチックを駆け回ったり、卵形の木のおもちゃを手に取ったり-。子どもたちが夢中で遊ぶのは、木育施設「KIRI no KO(きりのこ)」だ。

 2023年4月、子育て支援に力を入れる市が、スタジアム1階を借りて約1億円かけて整備。閑散とする平日のにぎわい創出も狙った。

 2023年度の利用者数は約6万8千人と、当初見込みの5万人を上回った。およそ半数は市外からだという。泊武宏さん(42)=同市=は月1回のペースで1歳7カ月の長女を連れてくる。「遊具が木製なので安全だし、特に雨の日には重宝している」。京都市北区から5、3歳の息子と訪れた男性(36)は「男の子2人なので、広くて走り回れるのが良い」と話していた。

 施設の隣には、スタジアム運営を担う企業の一つ「ビバ」(同市上京区)が開設した保育園がある。スタジアムを園庭代わりにする「遊育」が売りだ。

 屋内型クライミングジムやeスポーツ施設も特徴的だが、フィールドを見下ろすVIPエリアや定員4~120人の大小さまざまな計36室の会議室、コワーキングスペースといった商用に使える施設も充実する。今年4月は90団体以上が利用し、指定管理者のビバ&サンガは「駅から近い利便性と用途に応じて広さが選べるのが好評で、リピーターが増えている」とする。

 常設の観客席で大規模な集客ができるのも強みだ。

 2023年12月の金曜夜、ドローン計300機がスタジアム上空を舞った。それらが放つ光がサンガのマスコット「パーサくん」やサンタクロースを形作り、上空で動く姿が4千人超の招待客を魅了した。

 ショーはカラオケ機器販売やイベントを手がける東洋音響(京都市西京区)が、技術革新によるスタジアム活用を後押しする亀岡市の支援を受けて試行した。同社は「電波干渉の課題はクリアできそうだ。平日夜のショーなら、会場費を抑えられる。市内外から仕事帰りの人たちの集客も見込める」と手応えを話す。

 一方、フィールドは天然芝が傷みやすく養生期間も必要なため、スポーツ以外での活用は広がっていない。21年に行われた東京五輪の聖火リレーでは、保護マットを敷いたものの、ランナーや中継車が長時間走行した影響で芝が変色した。

 ようやく2024年9月、収益面からも期待されてきたフィールドでの音楽イベントが実現する。世界的に活躍するソプラノ歌手田中彩子さん=舞鶴市出身=が南米の青少年交響楽団を招く。保護マットを使い、芝に配慮した形で行う。

 府スポーツ振興課は「コロナ禍でサンガ戦が無観客開催になるなど、開業当初は苦戦したが、22年度は黒字化できた。サッカーの試合がない日も集客できるようにさらに工夫していきたい」と今後を見据えつつ、「もちろんサッカーも盛り上がってもらわないと…」と、下位に低迷するサンガの奮起に期待した。

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