国の税収が72兆円超えで過去最高!…なのに今後の日本財政が不安な理由

新居 理有 新居 理有

税収額が過去最高なのに、なぜ日本財政に不安があるのか?

国の税収が最高額になったにもかかわらず、今後の財政状況には不安があると言われています。不安になる大きな理由を2つ紹介します。

一つめの理由は、少子高齢化による財政状況の悪化です。高齢化により、年金や医療を中心に社会保障への歳出が大きく増えていきそうです。日本の将来推計人口(社人研)の分析によると、2020〜50年度にかけて総人口が2千万人ほど減る一方で、65歳以上人口は緩やかに増加すると予想されています。高齢者がより高い年齢層にシフトし、一人当たり医療・介護費が急増してしまうという議論もあります。

一方で、少子化により総人口は減少していくため、税収額は減る傾向が強まります。15〜64歳人口は、2020〜50年度にかけて2千万人近く減ってしまうと推計されています。社会保障への歳出をカバーできるくらいの税収を達成するには、人口減を埋め合わせられるような労働生産性の向上が求められます。少子化と高齢化の影響により、政府の財政収支が悪化してしまうおそれが大きいです。

もう1つの理由として、インフレが進むことで実質的な税収は減ってしまう効果もあります。見た目の税収額が変わらなくても、物価が上がると政府が購入できる財・サービスは少なくなります。また給付金の価値も目減りするでしょう。2023〜24年の消費者物価指数(総務省)を見てみると、前年と比べて3%ほど物価が上昇しています。今のペースで物価が上がっていくならば、税収額も1年ごとに3%ずつ増え続けてやっと、過去と同じ水準となる公共サービスや給付金を受け取ることができるのです。

税収が過去最高額を達成したこと自体は、直近の日本経済が良い方向に向かっていることを意味します。しかし、日本の財政問題が根本的に解決したわけではありません。むしろこれから大きな課題に直面することになります。順調に税収をあげている今だからこそ、将来の日本経済・財政の姿を議論し、取り組みを進めていくべきです。

【参考】
▽財務省「令和5年度決算概要(見込み)」
https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/account/fy2023/05kessangaiyoumikomi.pdf.pdf
▽財務省「法人企業統計」
https://www.mof.go.jp/pri/reference/ssc/results/index.htm
▽国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」
https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp_zenkoku2023.asp
▽総務省「消費者物価指数」
https://www.stat.go.jp/data/cpi/1.html

   ◇   ◇

◆新居 理有(あらい・りある)龍谷大学経済学部准教授 1982年生まれ。京都大学にて博士(経済学)を修得。2011年から複数の大学に勤め、2023年から現職。主な専門分野はマクロ経済学や財政政策。大学教員として経済学の研究・教育に携わる一方で、ライターとして経済分野を中心に記事を執筆している。

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