「東武動物公園から昨日すごい贈り物が。マンゴー?パパイヤ?冬瓜?何だと思いますか?」
動物繁殖研さん(@zooreplab)によるX(旧Twitter)への投稿。
美しいグリーンのツヤッとした果実らしき物体は、完熟前のマンゴーのよう。重さは665グラムで大きいなぁ、羨ましいと思っていたら、実はこれ……。
「答えはヒクイドリの卵!ワケあって昨年からご相談していました。エミュー卵もすごいですが、ヒクイドリ卵は初めて見ました。美しい。生物の面白さですね。成鳥もスゴイので、ぜひ東武とかへGO」
この美しいグリーン色の物体、なんとヒクイドリの卵なんだそうです。
「ガルベスが生んだ卵、そんなところに行ってたのか」
「食べるんですか?!育てるんですか?!」
「ヒクイドリの卵!熟す前の果物にしか見えませぬ」
「この緑は保護色なのかしら?正体を聞いた後も果物にしか見えない」
「果物に見えるようにして蛇に食われるのを避けたのかな」
このポストに寄せられたコメントを見ても、みなさん興味津々のようです。この美しいヒクイドリの卵について、動物繁殖学研究室の楠田哲士先生に詳細を伺ってみました。
想像以上にバラエティ豊かな卵たち
ーー動物繁殖学研究室は、どんなことをされている研究室なんでしょう?
「岐阜大学の応用生物科学部にあり、動物園などと一緒に繁殖生理を調べています。例えばライチョウやハシビロコウなど絶滅危惧種の飼育下繁殖を推進するために研究しています。メインは動物園の哺乳類ですが、鳥類も対象にしています」
ーー動物園と連携しているため「東武動物公園」(埼玉県南埼玉郡)から卵が届いたんですね
「ある博物館で2025年に卵をテーマにした企画展(当研究室とのコラボ)が予定されていて、その中でヒクイドリの卵も展示できないかという相談があり、探していたんです。私自身、さまざまな鳥類・爬虫類の卵殻標本をコレクションしていまして、授業や博物館の企画展などに活用しています。今回、標本用に未受精卵をご提供いただけることになり嬉しいです」
卵の生みの親は、世界最恐のヒクイドリ!
ーー先生もヒクイドリの卵をご覧になるのは初めてのようですが……
「実は日本では飼育されている動物園がとても少ないうえ、繁殖例はとても少ないので、見る機会があまりないんだと思います。卵の殻はとてもかたく、表面はデコボコしていました。この卵は標本として活用させていただく予定です」
ーーほかにも面白い卵ってあるんですか?
「カンムリシギダチョウの卵も見た目が卵っぽくないんです。一見石のようで深緑色をしています。爬虫類であればワニの卵とかも独特ですね。私たちは卵といえば鶏の卵の色と形を思い浮かべますが、実は卵はさまざまなタイプがあって面白いんですよ! 鳥類の卵は色や模様が多様ですし、爬虫類は形がさまざまです」
こうなると、マンゴーのような卵を産んだヒクイドリにも興味津々。そこで楠田先生にご紹介いただき、飼育している東武動物公園にお願いして写真を見せていただきました!
ヒクイドリは、頭から首にかけて目の覚めるような青と赤のコントラストが印象的なルックスです!頭頂に大型で扁平な兜状の角質突起があったり、するどいかぎ爪を見ると、なんだか現代に生きる恐竜のようにも見えてきます。
コメントでは「ヒクイドリの卵は食べられるの?」と関心を持ってる人がいましたが、東武動物公園の担当者によると「食べられないということはありませんが、食べたことはありません。なので味もわかりませんね」とのこと。
また、「なぜこんなきれいなグリーン色の殻なの?」という質問には「ヒクイドリの卵の緑色は、鳥類の卵殻に含まれる一般的な色素であるビリベルジンに由来します。ヒクイドリは地上に営巣する鳥なので、 卵の緑色は熱帯林で周囲の草木にカモフラージュするために使われ 、捕食される可能性のある動物から卵を守っているとされています」と教えていただきました。疑問が消えてすっきり。
ちょっと興味が湧きますよね? 東武動物公園のほか、日本では7カ所でしか対面できないほど希少な鳥なんだそう。夏休みに子どもと一緒に会いに行くのも良さそうです。
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