22年間、2200匹の「路上ネコ」を追い続けた写真家、集大成で500万カットから厳選「心を打つ哀愁」「たくましさ」

吉村 智樹 吉村 智樹

野良猫、地域猫など、屋外でたくましく生きる「路上ネコ」たち222匹が登場する写真集『路上ネコ、22の居場所で222匹』(幻冬舎)が発売され、話題となっています。

上梓したのは大阪の堺市に住む写真家の佐々木まことさん(56)。

佐々木まこと(以下、佐々木)「猫の鳴き声『ニャン』に引っ掛け、2(ニャン)にこだわって分類しました。振り返れば路上ネコの写真を撮りはじめてから22年と2か月。この写真集の校了日が奇しくも2月22日だったんです。偶然ではない気がしますし、ニャンコを撮り続けた自分の集大成になったかと思います」

「週に5日は路上ネコを撮影している」といい、1年のほとんどを屋外で過ごす佐々木さん。これまで撮ったカット数は驚異のおよそ500万枚! 1カ月でおよそ8万カット! 屋外での撮影でカメラを酷使するため、買い換えたカメラのボディは現在18台目。画像を保存しているハードディスクドライブも16テラバイト3台が「ほぼ路上ネコで満タン」だというから驚きです。

佐々木「2001年からデジタルカメラの練習のために路上ネコを撮りはじめました。それまで特に猫が好きだったわけではありません。ただ、人の家の庭で勝手にくつろいだり、車の上をベッドにしたり、屋根の上で昼寝をしたり、公園のベンチを我が物顔で占拠したり、縄張り争いのケンカをしたり、繁殖活動をしたり、魚を盗んだり……。そんな自由奔放に生きる路上ネコたち見ていると、なんだか『自分に似ているなあ』と思えてきましてね。現在も飽きることなく撮影を続けております」

「好きな時間に眠り、好きなようにだらける」。そんな路上ネコたちの暮らしぶりにシンパシーを抱いた佐々木さんは日々彼らの居場所へ通い、年間およそ100匹の動向を追います。「22年間ですから、2,200匹ですかね」。Googleストリートビューに写りこんだ路上ネコを見ただけで「あいつだ」とわかるというから、愛猫家を越えてもはや尾行する探偵、あるいは『週刊ニャン春』のスクープ記者です。

佐々木「何度も通っている場所だと、『こいつとこの子は親子』『あいつとそいつは親戚』『このオスは母親の兄弟』など関係性がわかってきます。叔父猫がちび猫と遊んであげたり、いとこ猫どうしでじゃれあったり。そういう光景をよく見ますよ。観察をするうちに、だんだん頭の中に路上ネコの家系図や相関図ができあがってくるんです」

エリア内の敵対関係も把握し、ときには亡きボス猫の跡継ぎを狙う者どうしの激闘にも出くわすという佐々木さん。これほど膨大な数の路上ネコを撮っているにもかかわらず、意外にも猫専門カメラマンになろうとはせず、自分から進んで作品を販売することもしないのです。

佐々木「たとえ路上ネコの写真で1円の収入すら得ることができなかったとしても、どこにも発表する場所がなかったとしても、今後もきっと撮り続けているでしょうね。よく仲間のカメラマンたちから、『ホームページを作って写真を販売したらどうか』とアドバイスをいただきます。でも、そんな時間があるくらいなら少しでも現場へ行きたいんです。この写真集のお話を電話でいただいたときも、漁港で路上ネコの撮影をしている最中だったんですよ」

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