「かわいい猫を撮ろうという意識はまったくない」
佐々木さんが撮る路上ネコの写真には大きな特徴があります。それは、いわゆる一般的な「かわいい」猫ではないところ。どの猫も不愛想で、ニヒルでハードボイルドなムードがあり、哀愁が漂うのです。
佐々木「路上ネコをかわいく撮ろうという意識がまったくないんです。それよりも人々のリアルな姿を撮影したストリートスナップに近い。それの猫版というか」
「ストリートスナップの猫版」。確かに佐々木さんが撮る路上ネコたちには、ストリートファッション誌や実話系雑誌に登場するワイルドな人々の表情に通ずるコワモテな雰囲気があります。そして、それは路上ネコたちの暮らしの厳しさを反映したものでもありました。
佐々木「過酷な場面に遭遇する場合もあります。カラスが2羽でペアを組み、1羽が親のしっぽにかじりつくなどちょっかいを出して注意力を奪っている間に、もう1羽が子猫をくわえてさらっていく。一瞬の出来事なので追い払うこともできないんです」
他の動物からの攻撃や自動車による事故など、屋外は危険に満ち溢れています。
佐々木「とはいえ、路上ネコはかわいそうなだけの存在ではないと思うんです。たとえば猫は夜行性でしてね。夜の公園へ行くと、追いかけっこをしたり木に登ったり、もう大運動会です。『お前も一緒に遊べ』とばかりにすり寄ってきます。そんな時間は、彼らなりに楽しいんだろうなと感じるんですよ」
夜になると路上ネコたちの動きが激しくなるため撮影は困難。佐々木さんはシャッターを切ることをあきらめ、公園で彼らとともに過ごすのだそうです。