22年間、2200匹の「路上ネコ」を追い続けた写真家、集大成で500万カットから厳選「心を打つ哀愁」「たくましさ」

吉村 智樹 吉村 智樹

漁港は路上ネコの楽天地

佐々木さんの新刊『路上ネコ、22の居場所で222匹』は、構成もとても斬新です。「飲み屋街・風俗街」「工事現場・工場」「温泉街」「バイク・自転車」など、猫の「居場所」を22か所に分類し、それゆえ彼らの「縄張り」が可視化できる仕組みになっています。特に巻頭に設けられた「漁港・漁船」の章は、映画『ゴッドファーザー』のようなファミリーの絆を感じるのです。

佐々木「漁港は物置や倉庫が多いため、路上ネコが一族で棲みやすいんですよ。そして漁港の敵は網を喰いちぎってしまうネズミ。そのためネズミを退治してくれる路上ネコと漁師さんは共存関係にあるケースが多いんです。キャットフードをあげて港全体で育てている場所もあります。ただ、エサを与えられているにもかかわらず、魚を盗んで食べちゃう。舌が肥えていて、『あいつら、高級魚しか食いやがらない』という声も聴きました」

陽が昇ると岸壁や物揚場(ものあげば)へやってきて、餌をもらったり、釣り人からおこぼれをもらったり(ときに奪ったり)、日向ぼっこをして過ごす漁港の路上ネコたち。そして眠くなるとかわいがってくれる漁師の船へと移動し、昼寝をする。食住にこと欠かず、誰にも追い払われない漁港は路上ネコたちの楽天地。そして佐々木さんにとっても大切な居場所であり、居住している堺市、大阪南部をはじめ、一年をかけて北海道や九州まで漁港の撮影に出向きます。

佐々木「漁師さんたちから顔を憶えられていて、よく缶コーヒーなどをごちそうになります」

漁師さんにとって佐々木さんもまた路上ネコ一族の一員だと認識されているのかもしれません。

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース