台湾と国交を持つ国をゼロに 中国・習政権 南太平洋と中南米で切り崩し工作を進行中

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頼清徳氏が総統に就任し、新たな中台関係が始まったわけだが、中国は既に頼政権へ圧力を掛けている。頼氏の就任直後、人民解放軍の東部戦区は台湾の北部、東部、南部の海域、中国大陸が目の前にある台湾離島などで2日間にわたる軍事演習を行ったが、これは習政権の一体妥協することはないという政治的シグナルだろう。これまでも中国は、中国軍機による中台中間線超えや台湾の防空識別圏への侵入、台湾産パイナップルやマンゴーなどの一方的な輸入停止など、軍事的にも経済的にも台湾を威圧してきたが、今後も強硬な姿勢が続くことが予想される。

そして、中国による威圧は軍事や経済だけではなく、外交という舞台でも強化されるだろう。南太平洋の島国パラオのスランゲル・ウィップス大統領は6月5日、2万件以上の文書が盗まれるなど、中国によるサイバー攻撃の被害に遭っていると主張し、米国や台湾など友好国とデジタル防衛強化を目指す方針を明らかにした。パラオは台湾が国交を持つ12カ国の1つだが、近年パラオを含む南太平洋地域では中国による外交的威圧に拍車が掛かっている。

今年1月初頭の時点で、南太平洋14カ国で中国と国交を持つのはパプアニューギニア、バヌアツ、フィジー、サモアなど10カ国で、台湾と国交を持つのはパラオ、ナウル、ツバル、マーシャル諸島の4カ国だったが、頼氏は総統選挙に勝利した直後の1月15日、ナウルが台湾との外交関係断絶を発表し、中国と国交を結ぶことを発表した。ナウルが外交関係の切り替えを行った背景は中国による経済援助などだろうが、こういったケースが近年相次いでいる。

2019年にはキリバスとソロモン諸島が台湾との断交を発表して中国と国交を結ぶなど、南太平洋では豊富なマネーを武器に島嶼国に接近し、外交関係の切り替えを迫る中国による外交的威圧が功を奏している。おそらく、中国は頼政権の4年間でパラオ、ツバル、マーシャル諸島の3カ国にも接近し、南太平洋で台湾と国交を持つ国をゼロにする外交的威圧をさらに展開するだろう。

似たような現象は中南米地域でも見られる。今日、中南米地域で台湾と国交を維持するのはパラグアイ、ベリーズ、ハイチ、グアテマラ、セントルシア、セントビンセントなど7カ国であるが、2017年以降“脱台湾”を図る国家が相次いである。2017年6月のパナマ、2018年4月のドミニカ共和国、2018年8月のエルサルバドル、2021年12 月のニカラグア、2023年3月のホンジュラスなど、中国は豊富な資金と影響力を駆使し、中南米地域でも外交的威圧を強化している。

習政権は民進党の頼政権を独立勢力として敵視しており、軍事や経済に加え、外交という舞台でも台湾に圧力をかける“多層的威圧”をフル回転させていくだろう。今後も台湾離反、中国和合を図る国家は出てくるだろう。

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