習近平による「脱米外交」が加速 中小国の擁護者を目指す中国 世界に広がる反米感情も後押し

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米中の間で対立が続く中、中国の習近平国家主席は5月上旬、フランスに続き東欧のセルビアとハンガリーを訪問した。習氏は5月8日、セルビアの首都ベオグラードでブチッチ大統領と会談し、中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」に参加する同国との間で経済や貿易、農業やテクノロジーなど幅広い分野で協力を強化していくことで一致した。また、2027年にベオグラードで万博が予定される中、中国企業が建設事業に積極的に関与していくことで合意した。そして、ブチッチ大統領は「台湾は中国である」との認識を示し、習氏はそれに大きな拍車を送った。

その後、習氏は中国やロシアとの関係を重視するハンガリーを訪問し、オルバン首相と会談した。ハンガリーもセルビアと同じく一帯一路に積極的に参加し、今回の会談では貿易やインフラ整備などを中心に関係を強化していくことで合意した。オルバン首相は欧州随一の親中・親露派で、中国が昨年公表したウクライナ戦争終結に向けての和平案(かなりのロシア寄り)にも支持する姿勢を示した。

今回の両国歴訪は、習近平による「脱米外交」と表現できよう。米国を中心に欧米陣営が中国への経済安全保障上の懸念を強める中、中国としては非欧米陣営を強化するべく、欧米と中小国との間に楔を打ち込み、より多くの中小国との関係強化を目指している。

習氏の中では既に11月に行われる米大統領選は終わっている。すなわち、バイデンが再選してもトランプが勝利しても米国の対中強硬姿勢に変化はなく、選挙戦の行方を注視していても意味がないことから、今のうちからより多くの中小国と関係を強化したいのだ。

そして、今日の世界情勢は脱米外交を展開し、中小国の擁護者を目指す中国にとって最適な環境と言えよう。昨年10月以降、イスラエルによるガザ地区への攻撃がエスカレートし、パレスチナ側の死亡者数は3万人を超えているが、ネタニヤフ首相は依然として攻撃の手を緩めない。しかし、強硬姿勢を貫くイスラエルに対する批判や反発は諸外国で拡大する一方で、トルコはイスラエルとの貿易を停止し、米国内でも若者たちによる反イスラエルデモがエスカレートしている。それにも関わらず、バイデン政権はイスラエル支持の姿勢を崩しておらず、それによってアラブ諸国だけでなく世界的な対米不信、反米感情というものも拡大している。実際、マレーシアやインドネシアなどのイスラム教国では、マクドナルドやスターバックスなどへの客足が減っているという。

今後、国際社会では欧米の影響力はますます衰退し、インドを盟主とするグローバルサウスの影響力が必然的に高まってくる。これは米国や日本にとっては望ましい環境ではないが、中国はよりいっそう脱米外交を展開していき、セルビアやハンガリーのような親中的な中小国が増えていく可能性がある。

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