夫の親が原因で離婚することは可能?
夫の親が原因で結婚生活がつらくなったとき、「夫の親との不仲のせいで夫婦関係が損なわれた」などとして離婚することは可能なのでしょうか。夫の親との不仲を理由に離婚できるケースや、離婚話を進める際のポイントなどを解説します。
▽相手と合意できれば離婚も可能
離婚は、結婚するときと同じように、夫と妻の合意があれば成立します。話し合いで離婚することを「協議離婚」といい、理由は問われません。「夫の両親との折り合いが悪い」という理由でも離婚は可能です。妻と義両親の仲が険悪となり、夫婦関係も悪化している場合などは、夫も関係修復をあきらめて離婚に応じてくれるかもしれません。
しかし、夫が義両親との別居に反対していたり、義両親の介護を妻に押し付けていたりするケースでは、問題が深刻化する可能性があります。夫が離婚に反対していたり、「義両親との関係の修復が可能かもしれない」と考えていたりする場合も、解決までに時間がかかります。
子供がいる場合は、離婚に合意しても親権や養育費をめぐって折り合えないこともありますし、離婚の条件に親が口を挟んでくることもあるでしょう。そのときは時間をかけて話し合うか、法的な手続きに基づいて離婚を求めていくしかありません。
実際、妻と義両親とが同居している場合には深刻な仲違いに発展するケースはとても多いのが実情です。しかし、夫婦関係の関係が良好な場合は、義両親との関係が原因でいきなり離婚するよりも、まずは「義理の両親と別居する」という決断をするのが典型的です。
別居して義両親と距離を置くことができる場合、義両親との関係を原因とする離婚は回避できるケースが多いでしょう。
▽離婚の合意を得られないときは調停という手も
夫が離婚に反対したり、離婚には同意してもらえても条件で折り合えなかったりした場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。調停とは裁判所の調停委員を介した話し合いで、調停委員が双方の意見を聞き、言い分を整理して合意を目指します。しかし、合意できる見込みがないときは調停不調として打ち切られてしまいます。
調停が打ち切られると、再び夫との間で協議離婚を目指して話し合うか、離婚裁判を起こして裁判所に離婚を求めることになります。裁判の結果、離婚が認められた場合は、夫の合意がなくても離婚が可能です。また、離婚の条件についても裁判所が判断して決定します。
▽離婚裁判では離婚事由が必要に
「夫が離婚に反対しても、離婚裁判を起こせば離婚できる」と考えている妻もいるかもしれませんが、裁判を起こすのはそう簡単ではありません。法的な根拠に基づいて裁判を起こさなくてはなりませんし、夫婦関係が破綻しているという証拠も示さなくてはなりません。
離婚裁判を起こすには条件があり、一つ目は離婚調停の後にしか裁判を起こせないということです。また、民法で定められた「離婚事由」がなければ、裁判を起こすことができないことになっています。離婚事由とは、次の5つの事情です。
・配偶者が浮気や不倫(不貞行為)をした
・一方的な別居や生活費の未払いなど配偶者の悪意で遺棄された(悪意の遺棄)
・配偶者の生死が不明で3年以上経つ
・配偶者が重症の精神病で治る見込みがない
・婚姻を継続しがたい重大な事由がある
離婚の裁判では、夫婦間の事情がこれら離婚事由に当てはまり、夫婦関係が修復不可能な状態にあるかが審理されます。たとえ離婚事由があっても、「夫婦関係の修復は可能だ」と判断されて離婚が認められないこともあります。
▽義両親との不仲という理由で離婚は認められる?
「夫の両親との不仲」という理由は、残念ながら離婚事由には該当しません。基本的には離婚は夫婦間の問題であり、裁判では当事者である夫婦の関係性が重要視されます。夫が離婚原因を作ったのでなく、夫も妻と義両親の間で関係改善に努めていたという場合などは、裁判で離婚の理由があるとはなかなか認められないでしょう。
離婚が認められるとすれば、妻と義両親が不仲な状態を夫が放置しているといったケースが考えられます。例えば「夫が両親の言いなりで、何も言わない」「夫が妻に、自分の両親に従うよう求める」といった事情があり、妻も精神的に疲弊しているというのであれば、裁判で「婚姻を継続しがたい重大な事由」として認められる可能性があります。
実際の判例でも、妻が義両親から小言を言われ続けて家庭不和になったのに、夫が家庭内のことに無関心で関係改善の努力もしなかったなどとして、離婚と慰謝料請求が認められたケース(昭和43年1月29日名古屋地方裁判所岡崎支部判決)などがあります。