広島市南区にある「猫とリラク」は、肩こり、腰痛などを改善する本格マッサージサロン。オーナーの桜井舞さん(30)は、ツボおしケア、タイ古式マッサージ、美容整体を組み合わせたオリジナルの施術を行うキャリア10年のセラピストだ。サロン内には黒猫の「テビ」(メス、推定21歳)、三毛の「ハナ」(メス、推定12歳)、ミヌエットの「ネム」(メス、2歳)、エキゾチックショートヘアの「部長」(オス、1歳)の4匹が、施術を受けるお客さんのそばで寄り添っている。もともと犬派だった桜井さんだが、今では「猫がいない生活は考えられない」というほどの猫派に。そのきっかけは、亡くなった高齢女性が飼っていた猫たちを引き取ったことだった。どんなことがあったのか。桜井さんに話を聞いた。
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桜井さん 元々はホテルでマッサージ師として働いていたのですが、コロナ禍で売上が低迷し、施設の老朽化もあって、その職場が廃業してしまって職を失ってしまったんです。どうしようかと悩んだ末、自宅を改装してマッサージサロンを開くことにしました。
開業のためのリフォームをしているときでした。親戚から「病気で亡くなった一人暮らしの高齢女性宅に、8匹の飼い猫が取り残され困っている」という知らせを聞いたんです。私はそのおばあさんのことを知りませんでしたが、残された息子さんは「この猫たちをどうしたらいいか…」と悩んでおられました。
私は幼いころからワンちゃんに囲まれて育ち、トリマー専門学校に通っていて、犬派だったんです。猫はひっかいたりするので怖いというイメージがあり、それまで飼おうと思ったことはありませんでした。だけど、行き場を失った8匹の猫ことを聞いてしまったからには、放っておくわけにはいかなくて。
新聞に広告を出すなどして里親さんを探しましたがなかなか見つからず、8匹のうち、テビ(当時19歳)、ハナ(当時10歳)、そして「レイ」という黒猫(当時17歳)の3匹を私が引き取るにしたんです。あとの5匹も結局、里親さんは現れず、私の祖母が2匹、祖母の知人が3匹を引き取りました。
亡くなったおばあさんは寝たきりで、ヘルパーさんが猫たちの世話をしていたそうですが、引き取ったとき、高齢のテビとレイは目ヤニがすごくて目が開かず、かなり衰弱した状態でした。でも、みんなおばあさんに可愛がられていたんでしょう。3匹ともすごく人なつこくて。ほどなくしてテビとレイは元気になりました。
特にハナは人間が大好きな子なんです。私のサロンが開業すると、教えてもいないのに、やってくる人のお出迎えやお見送りをしたり、相手の目を見つめながら、ちょいちょいと手を伸ばして「なでて」とおねだりしたり、3匹の中でも率先してお客さんを「接客」をしてくれるようになりました。
そうして猫たちと過ごすうち、当初抱いていた「猫はこわい」という先入観はどこかへいってしまい、猫の魅力にはまっている自分に気づきました。開業してまだ間もないにもかかわらず、3匹のおかげで「人なつっこい猫がいるサロン」との評判が広まり、猫好きの方が出張のついでにわざわざ来てくれたり、リピーターになってくれたりしてお客さんを招いてくれるようになったんです。