「自分より大事な存在だった」愛犬と過ごした19年4カ月 最期のお散歩は抱っこで「太陽いっぱいあびて、気持ちよかったかな?」 母の腕で旅立った柴犬

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「2023年3月5日0時40分頃、最愛の弟 玄太が天使になりました。
食事を摂らなくなってから9日目。
亡くなる前日の昼間は先日買ったスリングに入れて、本当に久しぶりにお外へ。太陽いっぱいあびて、風にも吹かれて、気持ちよかったかな?」

今年3月5日に虹の橋を渡ったという柴犬の玄太くん。19歳4カ月でした。玄太くんが亡くなる前日の昼間、飼い主さんはスリングに入れて抱っこしながら、お外へ。最後の散歩をしたといいます。

「もう長くないとは思っていたので、玄太を子犬の時からかわいがってくれた方や玄太の同級生のご家族にごあいさつをしたくて。1時間くらいだったと思います。玄太はずっと目をつぶってましたけど、お世話になったたくさんの方に話しかけてもらって、なでてもらって、玄太も幸せだったと思います。ずいぶん軽くなっちゃったなって思いつつ、もうかわいくてかわいくて仕方なかったです。

またその日は兄が1週間ぶりに出張から帰ってくる日でした。家族全員がそろうととても表情が豊かになって、うれしそうだった玄太。もしかしたらみんながそろうのを待ってたのかもしれません」

最後の散歩の翌日、眠るように息を引き取った愛犬

そして、最後の散歩の翌日深夜、飼い主さんの部屋で眠る玄太くんに異変が起きました。最期の時がきたのです。

「夜鳴きをするようになってから、母か私が夜は一緒に寝るようにしていました。玄太はいつもサークルの中で寝ていました。その日はいつも通りひとしきり玄太をいじくりまくってから、布団に入ってスマホを見ていました。しばらくして『ぺちゃぺちゃ』と音がして…一瞬放っておこうかと思ったんですけど、やっぱり気になって様子を見に行くと、明らかにいつもと様子が違って。

以前から鼻血を出していたのですが、亡くなる少し前からは目からも出血しており、きれいにしてあげるといつもとても気持ちよさそうだったので、とりあえず目をきれいにしてあげました。その時いつもなら反射的に目をつぶるのに開けっ放しで、明らかに焦点が合っていなくて、だんだん呼吸もゆっくりになっていきました」

「危ない」と思った飼い主さんは、2階で寝ているお母さんにすぐ電話をして起こしました。

「玄太が1番好きだったのは母なので、最期は母の腕の中で迎えさせたいと思いました。ただ結果的に母と私のどちらに抱っこされている時に息を引き取ったのか分かりません。母が起きてから2分後でした。亡くなる直前、私は『ありがとう』『大好き』と言い続けました。その後父を起こし、近くに住んでる兄にも連絡してすぐに来てもらいました」

玄太くんは飼い主さんとお母さんに代わる代わる抱きしめられながら、眠るように静かに息を引き取ったそうです。

   ◇   ◇

愛犬は柴犬 スーパーのペットショップで5万円で売られていた

玄太くんは飼い主さん家族にとって初めてのワンちゃんでした。犬を飼おうと決めたのは、お兄さんの転勤で「男が一人いなくなるから、男の子を迎えよう」というのがきっかけ。飼うのであれば柴犬と決めていたといいます。家族それぞれ仕事帰りにペットショップに見に行って、「ここにこんな子いたよ」などと話していた時、スーパーのペットショップで飼い主さんが玄太くんを見つけました。生後3カ月半で5万円という格安で売られていたのです。

「父にも仕事の帰りに見に行ってもらい、『ちょっと情けない顔してるけど、この子にしよう』と決めました。お恥ずかしながら、決め手は金額でした」

しかし、お迎えした時、玄太くんはケンネルコフという伝染性気管支炎にかかっており、入院に。そのことをペットショップに伝えたところ「他の子に変えますか?」と言われて、飼い主さんたちはショックを受けました。

「我が家に来て数日でも、私たちにはもう家族だったのでお断りしました。寿命が短くても、それまでちゃんと育てようと決めたんです。結果的に19年も生きてくれましたけど…」

慎重な性格、触られるのも抱っこも嫌いだったが…晩年は甘えん坊さんに

また玄太くんの名前は、「立派な番犬になるように」という意味を込めて、玄関の「玄」から名付けたとか。初めは外飼いですぐに玄関で飼い、10歳を過ぎた頃、完全に室内で飼うようになりました。

「玄太はすごく慎重で、初めて食べるおやつなどは警戒してなかなか食べないような子でした。性格は『The柴犬』で、触られるのも抱っこも嫌い。自分の気が乗らなければ誘っても遊ばない。でもたまにはかまって欲しい…みたいな感じです。ただ、兄のことは遊び相手と思っていたみたいで、兄の誘いにはよく乗って、追いかけっこやボール遊びをしていました。あとはぬいぐるみが大好きで、我が家のぬいぐるみは全て俺の物だと思ってたみたいです。

甘えん坊になったのは起き上がるのが難しくなってきた、だいぶ晩年になってからです。人恋しかったのか、体の自由がきかなくなって不安だったのか、話しかけて抱っこすると安心するようでした。好物は乳製品で、チーズやヨーグルト、バニラアイス。おじいちゃんになってからは焼きいも。子犬の頃から食が細くて、食べることに興味のない子でしたが、好物はよく食べてくれました。歩くのが難しくなって、食事も介助が必要になってからはウェットフードと焼きいもを混ぜたものを食べさせていました」

さらに、普段からあまりほえなかったという玄太くん。15歳の頃、近所で「死亡説」が出たほど。飼い主さんが散歩をしていると「2代目ちゃんですか?」と聞かれたり。「いえ、まだ1代目ですよ」と答えると、「えっ!玄ちゃんなの?」と驚かれたりしたそうです。

亡くなる前年の2022年の夏。玄太くんは前庭疾患になり、それから体の老化と認知症が一気に進んできたといいます。次第に足も弱くなり、10月初め頃から完全に寝たきりになりました。

「だんだん今までできてたことができなくなってきて、お座りやお手も忘れてしまいましたけど、母と私は『仕方ないね』という感じで受け入れることができました。もう十分高齢でしたので。でも新しく購入したサークルの出入口はサークルの位置を移動してもちゃんと分かっていて、出入口を閉めてると『出せ!』と言わんばかりに出入口に頭をグイグイ押し付けるんです。そんな時は『分かるの?天才!』とたくさん褒めてあげました。

また1番長い時間、玄太と一緒にいたのは母。大変な思いもたくさんしたと思いますが、私は玄太の介護が楽しくて仕方ありませんでした。楽しいというか、かわいくて仕方なかったです。本当に『赤ちゃん』という感じで。できるならまたお世話したいです」

   ◇   ◇

たくさんの花と大好きなおやつと一緒に火葬 飼い主「ありがとう」…愛犬に感謝

玄太くんが天国に行った後、飼い主さんのいとこや近所の人、お母さんの友人、長年お世話になったというトリマーさん、玄太くんのお世話を一所懸命手伝ってくれた近所の姉妹ちゃんたちからたくさんの花が贈られました。亡くなった翌日には、近くの犬猫霊園で火葬してもらったそうです。玄太くんの大好きなおやつと贈られた花も一緒に入れて…。

「お寺に向かう時、途中で近所の方と最期のお別れをしたり、元気だった頃のお散歩コースを回ったりしました。その時はソメイヨシノはまだ咲いてませんでしたが、河津桜が咲いていて、玄太にも見せてあげました」

そして4月22日、玄太くんの四十九日の法要を無事に終えました。飼い主さんは、20年近く一緒に過ごした玄太くんへの感謝の気持ちをこう話します。

「お骨になって帰ってきた玄太は家の形をしたお仏壇で今安んでいます。我が家に来てくれてありがとうという気持ちでいっぱいです。私は子どもがいないので、『自分より大事な存在』を玄太は教えてくれました。大好きとありがとう。それ以外ないですね」

   ◇   ◇

今回、玄太くんが息を引き取る前日に抱っこしながら最後の散歩をする動画を飼い主さん(@genta_shiba_a)がInstagramに投稿。「泣ける…」「穏やかな顔してますね」「愛されるって素敵だね」と感激した人たちなどからたくさんのコメントが寄せられ、話題になりました。

玄太さんのInstagramアカウント(@genta_shiba_a)

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