「もう要らない」狩猟期間の終了後に棄てられるパートナーの猟犬 幸せ目指すあなたを応援するよ

松田 義人 松田 義人

カメラに向かったかわいいメスのワンコ。ビーグルにも見えますが、ツリーイングウォーカークーンハウンドとおぼしきワンコのようです。古くから「人間のパートナー」として愛されてきた猟犬であり、近年では愛玩犬としての人気もある犬種です。

このワンコはれっきとした猟犬で、毎年よくあるという経緯から保健所に収容されました。

狩猟期間終了時、多く持ち込まれる元狩猟犬

ワンコの名は「テナー」。狩猟期間が終わった直後、飼い主から見放され保健所へ収容されたそうです。それまで狩猟の相棒として飼い主に支えてきたのに、「要らなくなったから捨てる」という信じられない話ですが、毎年の狩猟期間後、同様の理由から直接保健所にワンコが持ち込まれるケースがよくあるそうです。

テナーが収容された際も、他のワンコたちと一緒に檻の中に押し込められていました。

後にテナーを引き出すことになった保護団体・Delacroix Dog Ranch(以下、D.D.Ranch)のメンバーが、その檻を前にしたときテナーは爆吠えしていました。おそらくは身動きが取れない狭い檻の中に長い間収容されていることでのストレス。収容犬にはよく見られる行動で、スタッフは慌てませんでした。

さらに収容時のテナーには外耳炎を患っており、時折耳を振る動作をしていました。

飼い主はこれまで自分に支え、自分を信じ続けてくれたテナーをなぜ手放したのでしょうか。そして、テナーのひどい外耳炎を放置することに何のためらいもなかったのでしょうか。

「こんなに飼いやすい子はいない」

飼い主からテナーが受けた仕打ちを思うと憤りがこみ上げますが、今は幸せに導くことが最優先。メンバーは吠え続けるテナーに「大丈夫だよ。怖くないからね。これからいっぱい楽しく過ごそうね」と声をかけ保護。D.D.Ranchと提携する預かりボランティアさんの家で過ごすことにしました。

当初メンバーは、テナーがけたたましく吠えていたことから「興奮度が強く、飼いにくい性格かもしれない」と少々身構えていました。しかし、この心配は杞憂に終わりました。

預かりボランティアさんの家に来てからのテナーはすぐに環境に馴染み、笑顔を見せてくれました。逆に「こんなに飼いやすい子はいない」とさえ感じるほどでした。

ひたむきさから他のワンコに吠えることも

人間への忠誠心も十分。散歩の際はリードを引っ張ることはなく、人間の歩調にしっかり合わせて歩いてくれます。おやつなどをもらううれしい場面でも、ハイテンションになることもなく遠慮気味、後ろ足で立ち、そっとうれしさをアピールしてくれるお利口さんでした。

家の前を通る小型犬や野良猫などには激しく吠えて威嚇したり、散歩中にもすれ違うワンコに激しく興奮して吠えることもありますが、そこは狩猟犬の血のように感じます。改めてテナーのひたむきな性格を感じとる、預かりボランティアさんでした。

「今度こそ」の本当の家族と結ばれて欲しい

外耳炎は現在も治療中で、もう少し時間がかかりそうです。また猟犬という特性から「どうしても吠えなければいけない」といった場面でのテナーの声はとても大きいものです。

しかしこの程度のクセはどんなワンコにもあるもの。ここまでのお利口さんなら、幸せへと導いてくれる里親さんとのマッチングもそう遠くはなさそうです。

かつて元飼い主から捨てられ、檻の中でギュウギュウに押し込められていたテナー。近い将来、ここまでひたむきで忠実なテナーが本当の家族と結ばれることを心から願うばかりです。 

Delacroix Dog Ranch
https://ddranch.jp/

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