車を駐車して止まったはずなのに、ブレーキを踏んでいるはずなのに、車が動いている!?という感覚に陥ったことはありませんか。Xに投稿されたそんな体験が話題になりました。
「駐車場でバック駐車してピタリ止めた、と思ったら景色がゆらりと前に動いて、そんなバカな、とペダルをシャフトへし折るぐらいのつもりで踏んでも止まらなくて踏み間違えたかと脳フル回転しても間違えじゃないので踏み込んで足攣りそうになって心臓バクバクしてたら隣の車がスッと出ただけだったわ」
こんなドキドキ体験をポストしたのは「ひろみつ(@bakueikozo)」さんです。この投稿に「これわかる!一瞬、脳がパニックになる」「自分も過去に2回ほど同じ体験をした事がある。めちゃくちゃ焦って怖かった」などと多くの共感のコメントが寄せられました。
これは「ベクション」といわれる感覚で、自分が止まっているにも関わらず動いているように感じる錯覚です(視覚誘導性自己運動感覚)。視覚によってベクションが生じると、今回のようにブレーキを踏んでいるのに動いているように感じてしまいます。これは隣の電車が動いているのに自分が乗っている電車が動いていると感じたり、洗車機が動いているのに自分の車が動いていると感じる状況と同じで誰もがなりうる感覚です。
ひろみつさんは同じような状況で少し驚くことはあったそうですが、今回ほど慌てたのは初めてだったそう。これまでの経験から「普段は車庫入れしている車の近くでは極力動かず、隣に車が入ってきた時には秒数だけでなく、相手が駐車動作を完全に終わらせる、つまりPに入れたり、ベルトを外したりが見えるぐらいまで待ってから動いています」と話します。
「『隣が入るまで待っていたのにまだ待てというのか』という意見もありましたが、他の人が喜ぶことは何をしてもいいのでは、と思います。車のすれ違いで下がらなければいけないことに必要以上に腹を立てる人がよくいますが、『上手い方が下がるんだ』というような運転中の自分の心のコントロールが大事だと思います」とひろみつさん。
リプライには「車出すとき隣に車入ってきたらすぐには動かないようにしてる」とひろみつさんと同じように考えている人も多くいました。
視覚の錯覚について、「交通事故ゼロ社会」を目指して運転時の注意や知識、テクニックなどを発信している「ツキノワプロダクション(from 月の輪自動車教習所)」(@tsukinowapro)の担当者さんにお話を聞きました。
──今回話題になった駐車時の錯覚について、自動車教習所で教えることはあるのでしょうか。
このような錯覚について伝えるというカリキュラムは特にはないですが、距離感の錯覚などについては学科教習でお伝えしています。(参考:「絶対に奥の車がデカいはず→測ってみると…世にも不思議な錯視の世界」)
──遠くにあるものが若干大きく見えることで距離感を錯覚するというお話もしてもらえるのですね。こういった錯覚が起こらないようにする方法はありますか。
これはいわゆる脳が起こしているバグ状態なので、錯覚状態にならないようにする方法は難しいと思います。錯覚状態にならないように、隣の車が動いている時は、ブレーキをかけて停止して待つことがポイントかと思います。
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錯覚でパニックになると、止まらないことに焦ってアクセルを踏んでしまうこともあるかもしれません。ベクションは気をつけられるものではありませんが、そういった錯覚があることを理解できていれば、いざという時に早く冷静になれるのではないでしょうか。
■ひろみつさんのX https://twitter.com/bakueikozo
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