大きな交差点にあるバイク専用の「二段停止線」が減ってきているが、理由を調べてほしい-。京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に、そんな依頼が届いた。バイクを乗用車の前に停止させて巻き込み事故を防止する目的で作られたものだったが、取材を進めてみると、当初の思惑通りにはいかなかったことが分かってきた。
二段停止線は、バイクの出荷台数に比例して事故が増加しつつあった1990年代から全国各地で本格的に導入された。停止線の間隔は3~4メートルほどで交通量の多い幹線道路の交差点に設けられるケースが多い。
現状はどうなのか。京都府警交通規制課に問い合わせると「確かに年々減らしている」と認めた。府内では2006年に189カ所にあったのがピークで、9月末時点では154カ所と2割程度減った。21年に舞鶴市の大型交差点で廃止され、現在は京都市内にのみ残されているという。今年はこれまでに七条大宮、河原町丸太町、河原町広小路の各交差点の3カ所で二段停止線がなくなった。
減らされている理由は何なのだろう。府警の担当者によると、二段停止線が設定されていることで「バイクが車の間を無理にすり抜けて前に出ようとするなど危険な行為が見られた」という。
交差点の先頭に二輪専用の停止線があることで二輪側に優先意識が生まれ、結果的に信号待ちや渋滞時などのすり抜けを助長してしまう、という話のようだ。道交法ではすり抜け自体を取り締まる規定はないが、他の車との接触や転倒などの危険が伴い、事故につながりやすいリスクはある。
「当初の目的と違う使われ方をしている」との規制側の認識が高まる一方、バイクの保有台数やバイクが関係する事故の発生件数は年々減少している。そうした状況を踏まえ、二段停止線も道路改良の機会に合わせて減らされ続けているというのが実情だ。全国的に同様の傾向で、東京都などのように既に全て廃止した都道府県も多い。
二段停止線の減少について、ライダーの反応はどうか。毎日の通勤にバイクを使っているという30代男性=下京区=は「道路が混んでいても、すり抜けて素早く移動できるのが京都市内でバイクに乗るメリット。自分も十分なスペースがあれば前に出る」と明かす。その上で「すり抜けを取り締まらない限り二段停止線がなくなっても何も変わらないのでは」と予測する。
確かに二段停止線がない場所でも、二輪車が交差点の前方に並んでいる光景をよく目にする。社会に根付いた慣習を変えるのは容易ではなさそうだ。